エレクトリック・ギターの中には、とても斬新なデザインやアイディアを活かしたモデルが存在する。
現在はすっかり市民権を得たギブソン・フライングVやエクスプローラも、その中のひとつと言えるだろう。
今回は、そんなユニークなモデルの代表とも言える、リッケンバッカーの個性的なモデルを紹介しよう。

 写真右側にあるのは、リッケンバッカー・ライトショー・モデル(331)。
そのネーミングでも分かるように、演奏中にボディが7色に光るというとんでもないコンセプトで作られている。
暗いステージ上で見ると、まるで夜のネオンのようにボディが輝くという斬新な発想には、ただただ驚くばかり。

 1960年代後半は、アメリカやイギリスを中心に世界的なサイケデリック・ブームで、ビートルズを始め幻想的な音楽が若者たちの間で流行していた。
そしてそれらのムーブメントを背景として登場したギターが、1968年に発売されたフェンダー・ペイズリーレッド・テレキャスターや、ここで紹介する70年代初頭に発売されたリッケンバッカー・ライトショー・モデルだった。
このモデルはボディ全体が浅いコップのようにくり抜かれた構造で、その内部に赤や青、緑やオレンジなどいくつもの豆電球がセットされ、半透明のプラスティックボードでフタがされている。
しかも驚くことに、弾いたときの音の強弱で光る色や明るさが変化するため、ギターの演奏に合わせたライトショーが楽しめるという機能が付いている。
このギターを手にしてステージに立てば盛り上がること請け合いだが、当時かなり高価だったこともあり販売は苦戦、1970年代初頭から発売されたが70年代半ばには生産が完了した。
しかし80年代以降になって、元々販売数が少ないこのモデルがマニアのコレクターズアイテムとして注目され、現在市場でほとんど見かけることは無いが、マニアの間では数百万円で取引されている。

 そしてもうひとつ。
写真の左側にある黒いギターは、リッケンバッカー 336/12 コンバーチブルというモデルで、これまたユニークだ。
ご存知の人も多いが、リッケンバッカーには12弦モデルがとても多い。
しかもリッケンの12弦は、6弦用のヘッドストックに無理矢理12個のチューナーを取り付けるため、主弦用と複弦用のチューナーを90度ずらして設置されている。
こうすることで、確かに12個のチューナーを標準サイズのヘッドに収めることができる。
しかし、実際にチューニングをしてみると、チューナーボタンの位置と回転する方向が90度ずつ異なるため、頭が混乱しやすく慣れるのにかなり時間を要することは確かである。
また、一般的な12弦ギターは複弦が上、主弦が下にセットするが、リッケンバッカーはその逆で、主弦が上、複弦が下にセットされるのもユニークだ。

 しかもこのモデルは「コンバーチブル(変えられる)」というネーミングが付いており、これがまた画期的。
フロント・ピックアップのすぐ下に金属のクシのようなパーツが付いている。
これは12弦と6弦をワンタッチで切り替えるためのコンバーター。
コンバーチブル・コームの先端に6本の複弦を引っかけ、強制的にコンバーチブル・コームを下に押し下げて固定することで、なんと12弦ギターを6弦ギターとして使用可能となる。
デザイン的な好みは別として、これを使うことで10秒もあれば12弦ギターを6弦にしたり、また戻したりが簡単に行える。
なんともマジカルなアイディアである。だが、左手はあくまで12本の弦を抑えていながら、右手は6弦しか弾かないので、それに慣れるまではかなり違和感がある。まあ、機能性を取るか弾き心地を取るかの問題だが…、貴方ならどうする?