FENDER Starcaster

 「フェンダー・スターキャスター」というモデルをご存知だろうか?
「確か、そんなモデルがちょっと前に発売されたな…」と思った人もおられるだろうが、それはリイシュー・モデルである。

 このモデルのオリジナルが登場したのは1976年で、写真はデビュー当時製作されたスターキャスターのフライヤー。

 70年代中期以降から80年代前半は、世界的なクロスオーバー/フュージョン・ブームが巻き起こり、ラリー・カールトンに続いてリー・リトナーなど、多くのスーパー・ギタリストがギブソン ES-335を手に名作の数々を制作し、一世を風靡した。
ES-335が登場したのは1958年だが、70年代はセミアコースティック・ギターが爆発的なセールスを記録し、その筆頭となったのがES-335だった。

 フェンダー社としては、何とかそのシーンで活躍できる新たなモデルを製作したいということで、ES-335の対抗馬となるモデルの開発に力を入れた。
そして1976年に満を持して登場したのが、写真の「スターキャスター」だった。
フェンダーは68年にホロー・ボディを採用したテレキャスター・シンラインを発売し、まずまずの評価を受けての企画だったが、このスターキャスターに関しては力の入ったプロモーション活動を行うも全く効果がなく、発売から4年目となる1980年に生産を完了した。

 今見るとそれなりにバランスの取れたデザインで、2ハムバッカーの搭載、新たなデザインのヘッドストックの採用など、斬新なアイディアを満載した意欲的なモデルではあったが、それが裏目に出たのかフェンダー・ユーザーからは「まったくフェンダーらしくない!」とそっぽを向かれ、バッサリと切り捨てられた。

 しかし、あまりに売れなかったため、その後の中古市場にもほとんど姿を現すことはなく、レアギター伝説の筆頭と言える幻のギターとして語りぐさとなった。
しかし、2000年以降のビザール・ギター・ブームの中でスターキャスターはにわかに注目され、2014年にモダン・プレイヤー・シリーズの一環として、再登場したのである。
さらに、2019年には、スクワイアー・ブランドのスターキャスターも発売される等、そのレア度と個性的なキャラクターが若い世代のギタリストに再評価されている。

 ギブソンのフライングVやエクスプローラなど、デビューして10年近くして再評価されたギターもあるが、このスターキャスターに関しては、なんとデビューから半世紀経ってようやく陽の目を見たというレア中のレアケース。
中途半端に売れないくらいなら、とことん売れない方が返り咲ける可能性があるのだろうか…。