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Gretsch Players Edition特集
グレッチ・ブランドの中核を担うギターがプロフェッショナル・コレクションのモデルです。そのプロフェッショナル・コレクションが、今回、2 種類のモデル構成に分けられました。1 つがよりヴィンテージ的な仕様を特徴としたVintage Select Edition で、もう1 つが現代的な演奏性の向上を狙ったPlayers Edition です。このモデル構成により、ギターとしてのコンセプトがとても明確になりました。グレッチを選ぶ上で、とても分かりやすくなったのではないかと思います。例えば、グレッチを代表するホロー・ボディのギターとしてNashville が挙げられます。大きなホロー・ボディから生み出される独自のグレッチ・サウンドとレトロなデザインで大変人気があるモデルです。しかし、様々なジャンルの音楽をNashville だけでライブ演奏をするとなると、ハウリングなどの問題から少し気が引けてしまうギタリストもいたのではないでしょうか? そんなギタリストにお勧めなのがPlayers Edition のモデル達です。それではどんなスペックを持ったギターに進化したのかを解説していきたいと思います。
2-1/4 インチ・ボディ
2-1/4 インチ(約57mm)の薄いボディが採用されています。ソリッド・ボディのギターからの持ち変えでも違和感がなくプレイできる優れたボディ・デザインではないかと思います。また、ハウリングを抑えながら、グレッチの特徴であるホロー・サウンドも活かす絶妙の厚みです。ボディの厚みが薄くなったことで、ボディのホールド感が向上し、ミュートなどの演奏テクニックも容易になりました。ディストーション・サウンドで、ズンズンとリフを弾くなどのプレイ・スタイルにもマッチします。

ML ブレイシング
ボディ内部のブレイシングには、グレッチ・オリジナルのML ブレイシングが採用されています。ML ブレイシングは、2 本の主柱によってトップ板とバック板を繋ぎ、ボディ全体を一体化させる重要な役割を果たしています。さらに、ホロー・ボディ構造の弱点である剛性と耐久性を高める役割を果たすと共に、トップ板の振動をボディ全体へ行き渡らせることにも貢献しています。このML ブレイシングの構造により、薄くてもとてもよく鳴るボディを実現させています。

ロッキング・チューナー
マシンヘッドには、ロッキング・チューナーを搭載しています。チューニング・ポストに余分な弦を巻きつけないロッキング・チューナーは、弦の緩みなどによるチューニングの不安定さを無くし、優れたチューニング・ディフェンスを約束します。

ナット
ナットには、耐摩耗性に大変優れたGraph Tech のTUSQ XL を採用しています。ビグスビー・ヴィブラート・テールピースを使用したトレモロ・プレイにおいても、弦の滑りが良いTUSQ XL ナットがチューニングの安定感を生み出します。

ネック
サムネイル・ポジションマーカーがインレイされたエボニー・フィンガーボードを備えたネック材はメイプルで、スタンダードなU グリップを採用しています。また、フィンガーボードのラジアスは12 インチ(305mm)で、ミディアム・ジャンボ・サイズのフレットが打ち込まれています。癖のない形状を持ったスタンダードなネックは、プレイス・スタイルを問わず優れたプレイアビリティを提供します。

ピンド・エボニー・ベース
ヴィンテージ・グレッチのブリッジは、弦の張力で台座を抑える構造ですが、強いピッキングなどでは台座がずれるなどの問題もあり、両面テープなどで固定している個体も見受けられます。Players Edition の全てのモデルには、ピンド・エボニー・ベース(台座)を採用し、ブリッジにはロッキング・バーブリッジを装備しています。ピンド・エボニー・ベースは、ボディに2 本のピンを立てて台座自体を固定する構造です。このことで強いピッキングでもブリッジがずれることがなく、素晴らしいチューニングの安定感を達成し、演奏に集中することができます。

ストリング-スルー・ビグスビー
テールピースには独特のトレモロ・ニュアンスを持つ、ビグスビーのヴィブラート・テールピースを装備しています。グレッチ・サウンドへの味付けとして、このビグスビー・ヴィブラートを多用するギタリストは数多くいると思いますが、「弦交換が面倒くさい。」との要望もありました。Players Edition にマウントされるビグスビー・ヴィブラートは、新開発したストリング-スルー仕様のモデルを採用しています。ストリング-スルー・ビグスビー・ヴィブラート・テールピースは、ストリング・バーに穴が開けられていて、その穴に弦を通すだけで、簡単に弦交換ができるようになった画期的なユニットです。

コントロール
Players Edition は、ペーパー・イン・オイル・キャパシターSqueezebox(スクイーズボックス)を搭載しています。Squeezebox は、シルキーなヴィンテージ・トーンを特徴とした新開発のコンデンサーで、トーン・コントロールを絞ってもブライトなトーンを実現します。また、トーン・ポット自体にもトーンがフルの時には、完全にトーンがバイパスされるノーロード・トーン・ポットを採用しストレートなサウンドを放出します。さらに、マスター・ヴォリュームには、トレブル・ブリード・サーキットを装備し、ヴォリュームを絞っても、こもらない自然なサウンドを提供することが可能です。

メタル・ジャック・プレート
通常のホロー・ボディのグレッチのアウトプット・ジャックは、ジャック自体をダイレクトにボディへ取り付ける方法が取られています。しかし、ライブなど激しい演奏中にジャックをぶつけたりスタンドに置いた際にシールド・プラグを引っかけたりして、ボディにもダメージを残すことも多々見受けられました。Players Edition は、耐久性に優れたメタル・ジャック・プレートを介してアウトプット・ジャックをマウントするようにマイナー・チェンジされています。小さな仕様変更ですが、Players Edition が実戦へ向けて開発されていることが良くわかるスペックです。

ロック式ストラップ・ピン
Players Edition には、全モデルにロック式のストラップ・ピンが標準装備されています。メタル・ジャック・プレート同様に、ライブ・アクターとしての方向性を強く感じるアクセサリーです。

Players Edition はその特徴からみても、よりモダンなロック・サウンドでも無理なく演奏できるグレッチだと言えると思います。高いチューニング・ディフェンスを持ち、素晴らしいプレイアビリティを実現しています。もちろんグレッチならではの特徴的なホロー・サウンドは犠牲にされていません。誤解を恐れずに言えば、ハイゲインな演奏ではデメリットとされてきたホロー・ボディの弱点であるハウリングまでも、フィードバック・サウンドとしてグレッチ・ギターの中に取り込んでしまった感さえあります。是非、グレッチの新しい一面を打ち出したPlayers Edition のモデルを御茶ノ水楽器センターでお試しください。最後にもう一言、ライブ演奏など実戦向けに進化したグレッチ、それがPlayersEdition です!