前回の1955年製ストラトキャスターに続いて、56年に生産された製品を紹介しよう。

 1956年は、ストラトに大きな仕様変更が行われた年として知られている。
テレキャスターの時代からボディに使用されてきたアッシュ材だが、この年の半ばからアルダー材に変更された。
これは当時アコースティック・ギタリストがストラトを持った際に、重く感じるというユーザーからの声に応えたもので、軽量化を図るための仕様変更だった。

 またアルダー材の原価はアッシュ材より安く、さらに加工しやすくバラツキも少ないという木材の優等生で、50年代後半からはストラトのみならずフェンダー製品の大半のモデルに採用された。
写真でも分かるように、アッシュ材のようにハッキリした杢目がなく、きめ細かくプレーンな印象を受ける。
ボディには2ピース材が用いられているが、ギブソンのようにセンター2ピースの製品はほとんどない。

 55年の製品にはファットなネックが採用されていたが、56年になるとネックの厚みはそのままに、その両サイドを削り落としたややトライアングルに近いグリップに変更された。

 56年の6月から、ストリング・リテイナーが円盤型からプレス加工で作られたウィング型に変更された。

 56年製のストラトキャスターとして最も広く知られているギターは、エリック・クラプトンが若かりし頃に長年愛用したブラウニーだろう。

 写真は1956年後半に生産されたストラトだが、驚くほどコンディションが良く、大きなキズや塗装の焼けもほとんど見られない。

 アルダー・ボディは2ピース仕様だが、杢目がハッキリしないため継ぎ目が分かりにくい。

 56年6月から採用されたウィング・タイプのストリングリテイナー。
プレス成型で作られている。

 クルーソン・ペグのギア比は12:1。
この年から「KLUSON DELUXE」の文字が見られる。

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