1960 GIBSON Les Paul Standard

ギブソン・レスポール・モデル(ゴールドトップ)が誕生したのは、太平洋戦争が終わって7年目の1952年だった。
エレクトリック・ギターの歴史を振り返ると、1930年代からハワイアン・ギターのエレクトリック化が始まり、アーチトップのエレクトリック化がそれに続いた。
1940年代初頭には、エレクトリック専用モデルのホローボディ・ギター、ギブソンES(エレクトリック・スパニッシュ)シリーズが登場した。

 1950年に世界初の量産型エレクトリック・ソリッドボディ・ギターであるフェンダー・ブロードキャスター(テレキャスター)が登場すると、エレクトリック・ギターに対するプロギタリストの感心がにわかに高まっていった。
ギブソン社は、50年代におけるソリッドボディ・ギターの可能性を考慮し、その市場に参戦することを決めた。

 そうして誕生したギブソン初となるソリッドボディ・ギターであるレスポール・モデルは、ジャズ・ギターを彷彿とさせるグラマラスなアーチトップ形状を採用したギブソンらしいデザインのソリッドボディ・モデルとなった。
フェンダー・ギターのようなフラット・ボディ / ボルトオン・ジョイントとは異なり、構造的にも当時のフェンダーでは作ることができないギブソンらしいモデルだった。

 以来幾度となくモデルチェンジが繰り返されたレスポールだが、1958年夏にそれまでのゴールドトップから鮮やかなチェリーサンバーストに変更され、モデル名もレスポール・スタンダードに改名された。
サンバースト・フィニッシュの採用は、フェンダー・ストラトキャスターが同年に採用した鮮やかな3トーン・サンバースト・フィニッシュに対抗する目的もあった、とも言われている。

 今回紹介するギターは、1960年に生産された「GIBSON Les Paul Standard」。
レスポールは、1958年にサンバースト・フィニッシュを採用して以降大きな仕様変更は行なっていない。
しかし、ネック・グリップが58年、59年、60年と徐々に細く(薄く)なり、チューナー・ボタンのデザインが一部変更される等、マイナーチェンジが施されている。

 シミー・ペイジの愛用に代表される1959年製のバーストは、1958〜1960年の中でも最も人気を誇っているが、60年製のレスポールもエリック・クラプトンが拘って愛用した年代として知られている。
クラプトンはこれまでに数本の60年製バーストを所有しており、現在も60年製を所有していると言われている。
ギブソン・カスタムショップからは、クラプトンのシグネチャー・モデルとして「1960 レスポール・スタンダード・エリック・クラプトン “Beano” 」も限定発売され話題となった。

 写真は1960年製のレスポール・スタンダードだが、見る角度によってボディトップの杢目の出方がかなり異なっている。
これは杢目が強く出ているギターの特徴で、このギターの場合は正面よりもコントローラー側から斜めに見た時の方が深い杢目が現れる。

 オリジナル・バーストのピンナップや現行のカスタムショップ製品を見ると、このように杢目の美しいレスポールをよく見かける。
しかし、それらは美しい杢目を持つ個体がセレクトされた場合が多く、オリジナル・バーストに関しては、こういった強い杢目の個体は稀で、プレーントップが大半を締めている。

 また、1960年製のバーストは、58年や59年と比べて赤が褪色し難いこともあり、アンバーカラーというよりも赤みを残したチェリーサンバーストの製品が多いことも特徴となる。

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