FENDER Bandmaster Amp / Hand built by Dumble

前回のコラムに続いて、4月に行われたエリック・クラプトンの来日公演にまつわるトピックなネタを紹介しよう。

 近年エリック・クラプトンは、ステージでフェンダーのバンドマスターという中型アンプを2台使用している(1台はサブとして使用)。
先日の来日公演でも使用したので、ステージ近くで観覧した人はそれを確認できたかもしれない。

 クラプトンは、これまでに様々なギター・アンプを使用してきた。
フェンダーだと、ツイン・リバーブや57 カスタム・ツイン・リバーブ、トレモラックス、プリンストン Ⅱ、フェンダーに近い製品では、ミュージックマン HD-150、コーネル・ロマーニ 12なども使用し、60年代にはマーシャルやVOXも使用した。
また一時はダンブル・アンプを使用していたことでも知られ、昔からフェンダーとダンブルのサウンドを好んでいた。

 1970年代のダンブル・アンプは、フェンダー・アンプをカスタマイズしたところからスタートしており、クラプトンはそんなフェンダーのトーン・キャラクターをベースにしたサウンドを特に好んでいる。

 フェンダー・バンドマスターは、1953年に15インチ・スピーカーを1発搭載した15w出力の中型アンプとして登場し、60年に30w出力、70年に45w出力にパワーアップされたが、75年に生産が完了した。
現在クラプトンが使用しているバンドマスターは近年のリイシュー・モデルである。
実はそのバンドマスターだが、クラプトンが使用した個体は彼の好みに合わせてダンブルが2013年にカスタマイズした特別な製品で、市販はされていない。

 ハワード・ダンブルはギター・サウンドを極めたアンプの革命児として知られ、70年代からひとつひとつオーナーの好みに合わせたカスタム製品を製作し、その高いクオリティから伝説のアンプ職人となった人物である。
近年は「ダンブル系」と呼ばれるダンブル・アンプの構造やサウンドを徹底的に研究し、トリビュートしたアンプやペダル類が数多く登場しているが、実際にそのオリジナル・サウンドをダイレクトに体験した人は極限られている。

 ダンブル・アンプは、スティーヴィ・レイ・ヴォーンやエリック・クラプトン、ラリー・カールトン、ロベン・フォード、ジョー・ボナマッサ、スティーヴ・ルカザー、ジョン・メイヤー、カルロス・サンタナ、ベン・ハーパー、ライ・クーダーなど、70年代から90年代にかけて音にうるさい有名ギタリスト達がこぞって愛用し、多くの作品を残している。

 その特徴は、オーバードライブ・サウンドはもちろんのこと、クリーンやクランチ・サウンドにおいてもとにかくトーンが太く、力強いローが出るパワフルなサウンドで、まさしく現在のロック・シーンの礎を築いたアンプと言える。
しかし、多くの需要に対して極端に製作された製品が少ないため、世界で最も高価で入手が難しいギター・アンプとしても知られている。
しかし残念なことに、ハワード・ダンブルは2022年1月に他界し、多くのギター・ファンから落胆の声が囁かれた。

 6月末に発売される『Player』マガジンでは、4月のエリック・クラプトン来日公演で使用されたバンド機材を詳しく紹介する予定なので、興味のある人はぜひご覧頂きたい。