1968 GIBSON SG Standard

オリジナルのギブソン・レスポールは、メイプルトップとマホガニーボディの2重構造を採用しているため、重量がありまたネックジョイント部分に厚みがある。
そのためハイポジションにおける演奏性は、ストラトキャスターなどと比べてあまり良いとは言えなかった。
また、グラマラスなボディ形状は加工に手間と時間がかかるため生産性に劣り、コストパフォーマンス面でも効率が良くなかった。

 そこで1950年代末、ギブソンはより演奏性に優れ、モダンなデザインで、しかも生産性とコストパフォーマンスに優れた新たなレスポール・モデルの開発に着手した。
そうして1961年に完成した製品がSGである。
当初はレス・ポールとの契約上の問題で「レスポール」のネーミングがそのまま使用されたが、1963年にレス・ポールとの契約が解消されたことで、それ以降は同じ仕様であるがSG(Solid Guitar)というモデル名が使用された。

 60年代のロック・シーンは、ステージ・パフォーマンスがより重視されるようになり、取り回しの良いSGはギタリストにとって大きな魅力で、愛用者が相次いだ。
最終的に、SGは60年代のギブソン・エレクトリック・ラインナップの中で最もセールスが好調なモデルとなった。
今回のコラムでは、1968年に生産された2本の「GIBSON SG Standard」を紹介しよう。

 SGは、軽量な1ピース・マホガニーのウルトラ・シンボディを採用し、さらにボディ外周を大胆にコンター加工したダブルカッタウェイ・デザインである。
これにより、50年代のレスポール・モデル(4kg前後)よりも1kg近く軽量化されたが、これはライブパフォーマンスにおいて大いに役立った。
また、ハードな音楽とSGのサウンド・キャラクターのマッチングも良好で、SGはロック・ギタリスト達の御用達モデルとなっていった。
また22フレットの最終フレットまでがボディから飛び出したデザインは、ハイポジションでの演奏性を究極なまでに向上させた。

 しかし、ネックが外に飛び出しボディが薄いことで、ネックとボディとのジョイント部分に負担がかかり、その強度を上げるために何度かジョイント部分の構造やデザインが変更されている。

 写真は、どちらも1968年製の「GIBSON SG Standard」。1961年に大型ピックガーが採用された以降のセカンドバージョンである。
オリジナル・バージョンと比べると、ピックガードが2倍の大きさになり、フィニッシュがダークチェリーになっている。
セカンドバージョンは、キャビティが大きくなることでピックガードとバックプレートも大きくなり、軽量化に拍車がかかっている。

 リテイナーが付いたABR-1ブリッジを採用し、1962年から70年代初頭まで使用されたナイロン・ブリッジサドルがセットされている。

 ビブラート・ユニットは、1963年から採用された板バネ式のデラックス・バイブローラ(右側)が標準仕様であるが、左側のカスタムオーダー・モデルは、61年のオリジナル仕様であるスウィング・アウェイ・プル・サイドウェイ・トレモロがマウントされている。
このユニットはいまひとつ滑らかな動きが難しく短命に終わったが、それをあえてマウントしたカスタム仕様というのは珍しい。

 SGはライブでの使用も多く、ラフな扱いを受けることも少なくないが、写真はどらも極めて良いコンディションを保っている美しい個体である。

Special Thanks :「Player」