FENDER Custom Shop Journeyman Relic Eric Clapton Signature Stratocaster

4月に行われたエリック・クラプトンの来日公演は、「日本武道館100回公演」を含む記念すべきジャパン・ツアーとなった。
公演は6回行われたが、クラプトンは初日から最終日まで、一貫してホワイトブロンドのストラトキャスターを使用し、見慣れない白いストラトはファンの間で話題となった。
今回は、日本で初めて使用したそのホワイトブロンドのストラトキャスターを紹介しよう。

 クラプトンは長年に亘りいくつものシグネチャー・ストラトを使用してきたが、ブラックやECグレイ、アーモンドグリーン、ネイヴィなど、比較的重たいカラーリングの製品が多い。
しかし、今回使用したギターは、写真のホワイトブロンドのストラトのみ。
クラプトンが今回あえてこのカラーに拘ったのには理由があった。
今年1月8日に他界した旧友ジェフ・ベックへの追悼の意を表しているようだ。
ジェフ・ベックが好きだったテレキャスターのイメージを意識したカラーとしてこのストラトを選んだようだ。

 クラプトンのシグネチャー・モデルとなる、フェンダー・エリック・クラプトン・ストラトキャスターが誕生したのは1988年春。
このモデルが発売されて今年で35年目となる。
このモデルは彼が長年愛用した黒いヴィンテージ・ストラト、ブラッキーの仕様をベースにしているが、モダンな仕様も積極的に導入したオリジナル・モデルとして完成している。
クラプトン・ファンはもちろんのこと、プロギタリストの中にもこのECストラトを愛用している人は少なくない。
ある意味でそれだけ完成したシグネチャー・モデルとも言える。

 写真は2017年にカスタムショップから発売された製品で、「フェンダー・カスタムショップ・ジャーニーマン・レリック・エリック・クラプトン・シグネチャー・ストラトキャスター」という長いモデル名が付いている。
基本的にはECストラトをベースにしているが、ボディがアルダー材ではなく2ピース・アッシュを使用したブロンド・フィニッシュになっているのが大きなポイント。

 写真を良く見ると、ホワイトブロンドの下から薄らとアッシュの杢目が見えている。
1950年代前半のフェンダー製品のボディには、基本的にアッシュ材が使用されていた。
1954年に誕生したストラトも当初はアッシュだったが、56年を境にアッシュからアルダーへと切り換わった。
しかし、それ以降も杢目が透けて見えるホワイト・フィニッシュなどには、アッシュ材が使用されている製品が多い。
レギュラーのECストラトは基本的にアルダー・ボディだが、写真はブロンド・フィニッシュであるためアッシュを使用している。
一見1ピース・ボディのようにも見えるが、実際は2ピースのアッシュ・ボディで、上手く杢目が繋がっている材がセレクトされているようだ。

 クラプトンのブラッキーを意識したソフトVシェイプのネック・グリップを採用した1ピース・メイプル・ネック。
ヴィンテージを意識したアンバー・カラーにラッカー・フィニッシュされ、フィンガーボードには使い込んだイメージを演出するレリック加工が施されている。
ネック裏側の手のひらが当る部分の塗装はほぼ剥がされている。

 ピックアップは、フェンダー・ヴィンテージ・ノイズレス・ストラトを3つマウントしているが、ECストラトは誕生してから現在までに幾度かブラッシュアップされており、PUだけでも4つのバージョンが存在する。
ピックガードは1950年代を彷彿とさせる1プライの8点止め。
ミッドブースト、TBXコントロールを搭載することで、エリック好みのサウンドと幅広い音作りを可能にしている。
市販モデルのピックアップ・セレクターは5点式だが、本人のギターは3点式を採用している個体もあり、写真のストラトがどちらであるかは不明。
ストラップは家族からプレゼントされたエルメスのカスタムオーダー品で、今回はダンロップではなくフェンダー製のロックリングが付いている。
写真の個体は、2017年にモデルが発売されるにあたり、先行して2016年にトッド・クラウスが製作したプロトタイプである。

 6月後半に発売される『Player』マガジンでは、4月のエリック・クラプトン来日公演で使用された機材を大きく紹介している。