1959 MARTIN D-18E / 00-18E

1950年に世界初のエレクトリック・ソリッド・ギター、フェンダー・ブロードキャスターが発売され、翌51年にプレシジョン・ベースも発売された。
さらにギブソンからは、1952年にレスポール・モデル、翌53年にレスポール・カスタム、54年にレスポール・ジュニアが発売され、同年にフェンダー・ストラトキャスターも発売された。
1950年代は、フェンダーやギブソンを中心にエレクトリック・ギターが相次いで発売され、ギター・シーンと音楽シーンは新たな時代に突入していった。

 ギター・メーカーとして最も長い歴史を誇るマーティンは、そんなシーンの移り変りを静かに見守っていたが、流石に50年代後半になるとエレクトリック化の流れを無視できなくなり、ようやくエレクトリック・モデルの開発に着手した。
そして1959年に、D-18E、D-28E、00-18Eという3つのエレクトリック・アコースティック・モデルを発売した。
さらに、1962年にシンライン・モデルのFシリーズ、1966年にGTシリーズ、1978年にソリッド・ボディのEシリーズを発売することで、新たなシーンへの参入を試みた。

 写真は、最初に登場したマーティンのエレクトリック・アコースティック3モデルの中のD-18Eと00-18E。写真を見て驚くのは、その斬新なデザインだ。
メーカーのオリジナル・デザインと言うより、まるでユーザーが自分で改造したギターにしか見えないかなり違和感のある仕様で、既存のモデルに強引にピックアップとコントローラー類を取り付けている。
ピックアップを取り付ける位置のピックガードは大胆にカットされ、当時のマーティン・ファンには痛々しく感じられたことだろう。

 このモデルのベースとなったのは、左がD-18で右が00-18。
マウントされたシングルコイル・ピックアップは、外注されたディアルモンドで、グレッチのダイナソニックと同様の製品である。

 満を持して発売したエレクトリック・アコースティックだったが、市場の反応は極めて冷ややかでまったく売れず、D-18Eに関しては発売されて1年を待たずして生産終了となった。
当時生産されたD-18Eは僅か302本。
必然的にレアモデルとなったD-18Eだが、その30年後にニルヴァーナのカート・コバーンが『MTVアンプラグド』で使用したことで、一躍世界から注目される幻のギターとなった。
カートの使用したD-18Eは2020年にオークションに掛けられ、日本円でなんと6億4千万円で競り落とされ、世界に衝撃を与えた。
マーティンで最も売れなかった不人気モデルが、世界で最も高価なギターとなった。

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