1977 GIBSON Explorer

数ある歴史的な人気モデルの中には、デビュー当初はほとんど評価されず、そのモデルの生産が完了した後になってから人気が出た、というモデルがある。
その典型といえるのが、ギブソン・フライングVであり、エクスプローラである。
今回はその「Explorer」のセカンド・バージョンを紹介しよう。

 1952年に登場したギブソン初のエレクトリック・ソリッドボディ・ギター、レスポール・モデルは、50年代半ばには多くのプロギタリストに評価されギブソン・ブランドの新たな顔になりつつあった。
そこでギブソンは、よりクールでモダンなギターを発売し、新たなブランド・イメージを確立したいと考えた。

 1950年代後半は、アメリカとソビエトが宇宙開発を競い合っていた時代で、アメリカ国民は宇宙に対する興味と憧れを抱いていた。
そんな時代背景の中で、これまでにない斬新で宇宙的なモデルの開発が行なわれた。
そして1958年に誕生したのがギブソン・フライングVであり、それに続いて発売されたのがエクスプローラだった。

 これらの2モデルは「モダニスティック・ギター」と銘打って、来るべき60年代の新たな音楽シーンに向けて華やかなデビューを飾った。
しかし、1950年代のギターシーンはまだまだ保守的で、ロケットやイナズマのようなデザインのエレキギターはまったくユーザーから受け入れてもらえず、この壮大なプロジェクトは惨敗に終わってしまう。 

 それから数年後、60年代の音楽シーンではエレクトリック・ギターを手にした若者達が次々にヒットチャートを賑わすようになり、これまでに無い激しい音楽が巷にあふれるようになってきた。
さらに70年代以降はロックの黄金期を迎えて行く中で、より個性的なギターが注目されるようになる。

 フライングVは、60年代にマホガニー・ボディを採用した新たなデザインで極少数再生産された。
そして72年になると限定生産のフライングVとして、メダリオンが発売され完売となった。
そしてその4年後、1976年にようやくエクスプローラが限定モデルとして再生産されたのである。

 今回紹介するギターは、1977年に生産されたエクスプローラのセカンド・バージョン。
前年の限定生産モデルがすぐに完売したため、「リミテッド・エディション」の表記をやめ、80年代初頭まで何度か生産が繰り返された。

 再生産当初はオリジナルと同じコリーナ材のエクスプローラも紹介されたが、実際市場に流通したのは全てマホガニー・モデルである。
フィニッシュはブラウンナチュラルが中心で、オプションとしてブラックとホワイトも少数生産された。
写真はワインレッドにカスタム・フィニッシュされている極めてレアなモデルで、ヘッドストックの裏側に“SECOND” と刻印が打たれている。

 1-1/2インチのマホガニー・スラブボードを採用したボディは、直線を組み合わせた左右非対称の個性的なデザイン。
一見アンバランスで弾き難そうにも見えるが、実際に抱えてみるとウェイトバランスが良く、熟考されたデザインであることが分かる。

Special Thanks :「Player」/ Yoshio Nomura