1924 GIBSON L-5

ギブソンのアーチトップを代表するモデル、L-5が誕生したのは1922年。
以来現在に至るまで、1世紀に亘り名実ともに人気モデルとしてジャズ系のプレイヤーを中心に愛用されている。
当時はまだエレクトリック・ギターが登場する以前で、完全なアコースティック・モデルとして開発された。
20世紀初頭のポピュラー・ミュージック・シーンでは、ギターよりマンドリンやバンジョーといった弦楽器が主役だったが、1920年代になるとギターが様々な音楽シーンやアンサンブルの中で使用されるようになってきた。
そんな時代背景の下で誕生したモデルがL-5である。

 このモデルは、初期ギブソンの製品開発に大きく貢献したアコースティック・エンジニアのロイド・ロアーによってデザインされた。
彼は元々優れた演奏家 / 作曲家で音響工学等にも精通しており、1919年から24年までギブソンに籍を置き、ギターやマンドリンの開発やデザインに関わった。
L-5は初めてF型サウンドホールが採用されたモデルで、その切れの良いサウンドは高く評価され、やがてF型ホールはアーチトップ・モデルのスタンダードなスタイルとなった。

 写真の製品は登場して2年目にあたる1924年製のL-5。
16インチ・ワイドのスプルース / メイプル・ボディは、ブラックに近いダークなクレモナ・ブラウン・サンバーストにフィニッシュされ、現在のサンバースと比べると明るい部分が中央にしかない。

 ネックは薄いエボニーを挟んだ3ピース・メイプル、14フレットジョイント、エボニー・フィンガーボードにはシンプルなドット・ポジションマークを採用している。
スネークヘッドと呼ばれるナロー・ヘッドに「The Gibson」のスラント・スクリプト・ロゴ、その下には高級モデルの証でもあるフラワーポット・インレイが施されている。
L−5は1934年に17インチ・ボディが採用され、スケールも24-3/4から25-1/2インチに変更された。

 L-5の左側は、1924年製のマンドラ H-5、右側は1923年製のマンドリン F-5。
どちらもロイド・ロアーがデザインした名器として知られている。

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