1969 GIBSON Les Paul Personal

ギブソン・レスポール・モデルは、1930〜50年代に人気を博したジャズ、ポップス系ギタリスト、レス・ポールのシグネチャー・モデルとして誕生したが、本人はレスポール・スタンダードや レスポール・カスタムといった市販モデルを使用することはなかった。
レスが愛用したのは、ローインピーダンス・ピックアップを搭載した特殊なカスタム・ギターで、外観はレスポールに似ているが、アッセンブリやコントロールがまったく異なる独自なギターである。
ローインピーダンス・ピックアップはクリーンなサウンドを直接ミキサーなどに入力することを前提に作られたもので、一般的なギター・アンプでは音量が小さ過ぎて使用できない。
ミキサーに直接入力しない場合は、専用ケーブルもしくは専用アンプが必要となるが、そのサウンドは限りなくクリーンで、レスが求めていたものだった。

 写真の「ギブソン・レスポール・パーソナル」は、そんなレス・ポール本人が愛用していた特殊なギターのコンセプトを市販モデルに取り入れたギブソン初のローインピーダンス・ピックアップ・モデルとして1969年に発売された。

 一見レスポール・カスタムをベースにしたモデルのようにも見えるが、ボディ幅は14インチワイドで、レスポールより1インチ以上大きくかなり重量もある。
4つのコントローラーの他に、コントローラー・パネルには3ポジションのトーン・セレクター、リアピックアップのフェイズ・スイッチがセットされている。

 パーソナルは発売当時650ドルというかなり高価な価格設定がなされたが、すぐ後にレスポール・プロフェッショナルという後続廉価モデルが発売され、1971年にレスポール・レコーディングへと基本的な仕様が引き継がれた。
パーソナルは発売からわずか1年ほどの期間で生産が終了し、またロック指向のギターではなかったこともあり、レスポール・ファミリーという位置づけでありながらも出荷は極端に少なく、中古市場でも見かけることはない。

 写真のギターは、実は70年代にエリック・クラプトンが所有していた個体で、ギター・ケースにもその証が白のステンシルで記されている。
エリックがこのレスポール・パーソナルをステージなどで使用していたことは確認されていないが、1980年に行われた「ロンドン・ロック・オークション」という楽器オークションで、他のギターと共に出品され、それを日本人のギター・コレクターが落札した。

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