1939 GIBSON SJ-100

ギブソンの「キング・オブ・フラットトップ」の異名を持つJ-200は、ブランドを代表するジャンボ・モデルとして知られ、戦前から脈々と続く長い歴史を誇っている。
今回紹介する「SJ-100」は、そのJ-200の姉妹モデルとしてほぼ同じ頃に登場したが、短命に終わったこともありアコースティックが好きな人にもあまりその存在が知られていない幻のモデルである。
今回は、そんなギブソンのレアモデル、1939年製のオリジナル SJ-100を紹介しよう。

 このモデルはSJ-200の廉価バージョンとして、SJ-200が発売された翌年の1939年に発売された(モデル名の “SJ” は “スーパー・ジャンボ” の頭文字だが、のちに現在のJ-200に改名された)。
SJ-100のボディ・サイズはSJ-200と同じ17インチ・ワイドで、装飾等を排除したシンプルなエコノミー・モデルとしてカントリー・シンガー達に向けてリリースされた。
当時フラッグシップ・モデルだったSJ-200の価格が200ドルだったのに対して、SJ-100はその半分の100ドルに設定されていた。

 SJ-200がローズウッド・バック&サイド・ボディであるのに対して、SJ-100にはマホガニー・ボディが採用され、ピックガードやバインディングもシンプルなデザインとなっている。
ボディトップのスプルースは、クレモナブラウン・サンバーストにフィニッシュされ、戦前のギブソンらしい趣が感じられる。

 SJ-200 / SJ-100を象徴する口ひげ型のマスタッシュ・ブリッジには、6個の独立したベアリング・サドルがセットされている。
これは、サドルを回転させることで、それぞれの弦の弦高を独立して調整できるというかなり斬新な仕様である。
写真の製品はサドルが金属ナットを介して取り付けられているが、金属ナットを介さずに直接ブリッジにセットされている製品もある。

 最大の特徴となるのが、階段状のデザインとなるステアステップ・ヘッドの採用である。
この仕様は、同じ1939年に発売されたジャンボ・モデル、J-55にも採用されたが、数あるラインナップの中でこの仕様が採用されたのはその2モデルくらいではないだろうか。
このデザインは加工に手間と時間がかかるのか、どちらのモデルも2年間ほどで廃止された。

 ギブソンの出荷記録によると、SJ-100は1939年から41年までの3年間にトータル138本しか出荷されておらず、極めて短命で希少なモデルである。

 1930年代後半というと、マーティンのドレッドノートが登場してまだ5〜6年しか経っておらず、小型ギターが主流の時代だった。
そんな時代に17インチ・ワイド・ボディ(ドレッドノートは15-5/8インチ・ワイド)を採用したSJ-200やSJ-100は、正しくスーパー・ジャンボなモデルだった。

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