1972 GIBSON Les Paul Recording

前回のコラムで、ギブソン・レスポール・シグネチャー・ベースを紹介し、そのモデルが誕生した経緯について述べている。
レス・ポールは以前からハイファイなサウンドに拘り、自分でローインピーダンス・ビックアップを開発、製作していたが、1969年にギブソン初のローインピーダンス・ピックアップを搭載したモデル、レスポール・パーソナルの発売に繋げていった。

 パーソナルはマイクの入力端子まで装備された特殊なモデルで、しかもかなり高価だったこともあり、すぐにその廉価モデルとなるレスポール・プロフェッショナルが発売された。
しかしこのプロフェッショナルは短命に終わり、1971年にサーキットをさらに進化させた「Les Paul Recording」が完成した。
今回はそのレスポール・レコーディングを紹介しよう。

 レスポール・スタンダードやカスタムとよく似た形状のボディラインであるが、実際はスタンダードよりも幅が15mm程度ワイドで、内部はマホガニーのセンターにメイプルを挟んだ3ピース構造である。
ボディバックには大きなコンター加工が見られるのも特徴のひとつ。
1977年頃からサイズが小型化され、レスポール・カスタムと共通するメイプル・トップ / マホガニー・バックに変更され、1980年頃まで生産された。

 先代のパーソナルとプロフェッショナルはウォルナット・フィニッシュだが、このレコーディングはナチュラルがスタンダード・カラーで、オプションとして写真のホワイトとブラックが用意された。
写真は1972年に生産されたオリジナル・モデルで、やや大型ボディということもあり一般的なレスポール・スタンダードより1kgほど重い。

 プラスティックのカバーにブランドロゴがエンボス加工された楕円形のローインピーダンス・ピックアップは、メタルリングに3本のアジャスタブル・スクリューでセットされている。
内部はバーマグネットを中央に置いたボビンを2つ重ねたスタック構造で、エポキシ樹脂を充填することでカバーに固定されている。
一般的なコイルワイヤーより遥かに太いワイヤーが使用されているため、ターン数は3000回と少ない。

 コントロールパネルに集約された回路は、コントロールポットがボリューム、ディケイド、トレブル、ベースの順番にならび、フェイズ(イン / アウト)とインピーダンス(ハイ/ ロウ)切り替えのスライドスイッチ、トーンスイッチ、セレクターが装備されている。

 このモデルを見で分かるように、レス・ポール本人が求めていたギターは、音質をシビアに追求したハイファイでクリーンなトーンだった。
しかし、ほぼ同じ時期に50年代のレスポール・スタンダードを復刻させる企画が平行して進んでいた。
それら2つの製品コンセプトは真逆とも思われるが、どちらのモデルもレス・ポールのシグネチャー・モデルであったことは、極めて興味深い。

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