1964 FENDER Jazz Bass

レオ・フェンダーがギター・シーンに与えた影響は計り知れない。
世界初の量産型エレクトリック・ソリッドボディ・ギターであるブロードキャスター(テレキャスター)は、現代ギターの礎として後のギター・シーン、音楽シーンに多大な影響を及ぼした。
レオは1965年にフェンダー社をCBS社に売却するまで、全てのギターやアンプの開発を行なったが、その中にはテレキャスターやストラトキャスターといった最も評価されたギターもあるが、それらと並んで、もしくはそれ以上に画期的とも言われる製品を開発している。
その製品とは、1951年11月に発売されたプレシジョン・ベースである。

 プレシジョンの登場により、ベース・プレイヤーは誰にでも正確(Pracision:正確、精度)な音程で演奏ができるようになり、アンプを使用することで音量を自由にコントロールでき、さらにギターに近い可搬性も獲得した。
これはベーシストにとって革命的な出来事で、多くのベーシストがこぞってその恩恵にあずかった。
また、中にはベーシストを兼任するギタリストも登場するなど、ベース・プレイに対する根本的な考え方が改められたことで、音楽シーンも大きく様変わりした。

 そんなプレシジョン・ベースは、ブロードキャスターの登場以上に市場の反応が良く、瞬く間に多くの音楽シーンで使用されるようになった。

 50年代後半になるとすでにベース市場はフェンダーの独断場となっており、プレシジョンは、エレクトリック・ベースの代名詞となった。
そして50年代末になると、フェンダーはプレシジョンの上位モデルの開発に着手した。
より演奏性に優れ、幅広い音作りが可能な高級モデルというコンセプトで、1960年に登場したエレクトリック・ベースの第二弾が、ジャズ・ベースだった。

 ジャズ・ベースは、1958年に登場したジャズマスターに倣ってオフセットウェスト・ボディを採用し、ストラップを付けてベースを構えたポジションの安定性やフィット感に優れている。
またネックがプレシジョンよりもナローなグリップと軽量なボディを採用したことで、プレイアビリティが向上している。

 シングル・ピックアップ仕様のプレシジョンに対して、ジャズ・ベースにはデュアル・ピックアップと3コントローラーが採用され、音作りの幅が格段と向上。
「ジャズ」というネーミングではあるが、ジャズに限らず幅広い音楽ジャンルで使用されている。

 写真は1964年に生産された「FENDER Jazz Bass」。直列に配線された2つのシングルコイル・ピックアップは、お互いに逆着磁、逆巻きになっており、ミックス時にハムキャンセル効果を生み出している。
1960年に登場したオリジナル・モデルはタンデム・コントロールだったが、1962年に2ボリューム、1トーンの3コントロールに変更され、写真の仕様となった。

 写真の製品は生産されて60年が経過しているが、ボディに大きなキズ等はほとんど見当たらず、驚くほどコンディションが良い。
ボディの3トーン・サンバーストの赤みも濃く、とても美しい個体である。

Special Thanks :「Player」/ Shozaburo Nagata