1969 GIBSON L-5CES

今回は、ギブソンの高級エレクトリック・アーチトップ、L-5CESを紹介しよう。
このモデルは、L−5のエレクトリック・バージョンとして1951年に登場した。
ウェス・モンゴメリーを始めとする、ジャズ界の巨匠から、エリック・クラプトンなどのベテラン・ギタリストも愛用し、ギブソンを象徴するエレクトリック・アーチトップとして広く知られている。

 L−5CESを紹介するにあたり、まずその母体となった歴史的なアコースティック・モデル、L−5について簡単に説明しよう。
L−5の歴史は古く、登場したのは今から100年近く前の1922年。
ギブソンF−5マンドリンの開発者として知られるロイド・ロアによって開発されたモデルで、ギブソンが最初にFホールを採用した記念すべきモデルである。
このモデルの誕生はギブソンだけに止まらず、現代アーチトップ・モデルの礎となり多くのブランドにも影響を及ぼした。

 デビュー当初は一回り小さな16インチ・ワイド・ボディを採用していたが、1935年に17インチ・ボディが採用され、以来大型アーチトップとして現在も人気を博している。
1920年代は、まだFホールを採用したギターが存在しておらず、アーチトップにもラウンドホールが採用されていた。
L−5は最初からFホールを採用したモデルとして登場し、これまでにない明快で立ち上がりの良いサウンドは、その後のアーチトップ・シーンの主流となった。

 そしてこのL−5をベースに、ピックアップとエレクトリック・アッセンブリを装着したモデルが1951年に登場した「GIBSON L-5 CES」である。
モデル名の “CES” は “カッタウェイ・エレクトリック・スパニッシュ” の頭文字。写真は1969年に生産された L-5 CESである。

 17インチ・ワイドの大型ラウンドカッタウェイ・ボディを採用。厚いソリッド・スプルース材から削り出しによって加工されたトップは、ハウリングを考慮してアコースティックのL-5よりも僅かに厚く加工されている。
50年代の製品は、バックが2ピースのソリッド・メイプル材を削って作られていたが、60年代以降は1ピースのメイプル合板をプレス機によってアーチ形状に加工している。
トップの内側には、ピックアップを挟んで縦方向に2本のパラレルブレイシングがセットされている。

 25-1/2インチ・スケールを採用した3ピース・メイプル・ネックには、ポイントエンドのエボニー・フィンガーボードがセットされている。
写真はナット幅1-9/16インチのナロー・ネック仕様だが、69年後半から1-11/16インチのやや幅広いネックに変更された。

 マルチバウンドのヘッドストックには、高級モデルの証となるフラワーポット・インレイが施され、豪華さを演出。
クルーソンのシールファスト・チューナー120Gは、本来この年代はプラスティックボタン仕様だが、写真はメタルボダン仕様である。
50年代のトラスロッドカバーはプレーン・タイプで、60年代から「CUSTOM」の文字が刻まれるようになった。

 1951年のデビュー当初はP-90シングルコイル・ピックアップを搭載していたが、54年からアルニコVに変更され、57年からオリジナル・ハムバッカーを搭載。
4コントローラー仕様で、右上にある3ウェイP.U.セレクターは切り替えの際にノイズを拾わないように、ラバーリングを介してセットされている。

 写真は明るいサンバースト・フィニッシュが採用されているが、ナチュラル・フィニッシュの製品もある。
ローズウッド製台座の上にエレクトリック・ギターにも使用されるナイロンサドルが付いたチューンOマチック・ブリッジがセットされている。
これは1954年から70年代中期までの仕様で、それ以降はエボニー・ブリッジに変更された。

 中央にシルバーインサートがセットされたバリトーン・テイルピースは、エンド部分の穴からアレンスクリューを回転させることで角度を調整し、トーンに変化を与えることができる。

Special Thanks :「Player」/ Woodman