1959 FENDER Stratocaster

フェンダー・テレキャスターのデザインは、アコースティック・ギターをソリッド・ボディにアレンジしたものであろうことは、何となく理解できる。
しかしストラトキャスターとなると、アコースティックからもテレキャスターからもかなりかけ離れたデザインで、いったいどこからあのデザインが生まれたのか、不思議でならない。

 実はストラトは、テレキャスターをモデルチェンジして行く中で生まれたギターで、テレキャスターに様々な機能を追加し、使いやすさを追求していく中で誕生した。
しかし製品を発売するにあたり、テレキャスターもそこそこ人気があったことから、テレキャスターとは別のモデルとして発売したようだ。
レオ・フェンダーの天才的なアイディアとデザインセンスにはただ驚くばかりだが、フェンダーの製品ラインナップは、そんなレオの思考回路がよく見える博物館と言えるだろう。

 今回紹介するギターは、1959年に生産された「FENDER Stratocaster」。59年は、それまでフェンダー・ギターのトレードマークだったメイプル1ピース・ネックを廃止し、ストラトはもちろんのこと全てのモデルにローズウッド・フィンガーボード・ネックを採用した年。
ストラトのネックが切り替わった時期に関しては定かではないが、59年製のストラトの2/3程度がローズウッド・フィンガーボードであることから、おそらく春から夏に掛けて切り替わったのではないだろうか。
写真のギターのネックデイトは「4月」なので、ローズウッド・フィンガーボードに切り替わる直前に生産された製品と思われる。
この仕様の変更にともない、サウンド面も含め、ストラトキャスターの印象がかなり変化した。

 写真は、1959年に生産されたストラトキャスター。
見て分かるように、極めてコンディョンの良い個体で、ボディのキズやフィンガーボードの塗装の剥げなどはほとんど見当らず、オリジナルのマッチング・ケースはもちろんのこと、出荷時に付属しているストラップやオリジナル・シールド、マニュアルまで付いており、正しくニアミントコンディションである。

 2ピースのアルダー・ボディは、前年に採用された赤を加えた3トーン・サンバーストにフィニッシュされているが、3トーンが採用された当初によく見られたワインレッドのような重い赤ではなく、鮮やかな赤が使用されている。

 ダイレクトにセットされていたヘッドのストリングガイドは、スティール製のスペーサーを介してセットされるようになり、摩擦が軽減されている。

 ピックアップのポールピースはアルニコマグネット製で、その先端はラフに面取り加工されている。
#42ゲージのコイルワイヤーが巻かれ、最後に溶解したパラフィンの中に含浸されている。

 1959年は、フェンダー社にとって色々な出来事があった年だった。テレキャスター・カスタム、エスカイヤー・カスタムの発売、イギリスヘの輸出が始まり、ギター・ケースやアンプのカバリングが耐久性のあるトーレックスに変更され、フェンダー・エレクトリック・インストゥルメンツ・カンバニーが株式会社になるなど、70年代に向けてざまざまな動きがあった時代である。

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