[ 1980 GIBSON ]
THE SERIES

 1978年に登場したレスポール・ファミリーの中に「ザ・ポール」という廉価モデルがあるのをご存知だろうか?


このモデルは、基本的な外観やエレクトリック・アッセンブリ、金属パーツなどがレスポール・ファミリーの流れを汲んでいるが、ボディとネックはブラックウォルナットから作られている(フィンガーボードはエボニー)。
また装飾類をすべて廃した極めてシンプルで割り切ったデザインが採用され、78年から82年までの4年間生産された。
レスポールの外観でありながら価格を大幅に抑えた良心的な設定が当時好評を博し、4年間という短い生産期間ではあったが売れ行きは良好だったようだ。

 実はこのウォルナット・モデルはザ・ポールだけではなく、ザ・ポール・デラックス、ザ・SG、ザ・SG・デラックスといった姉妹モデルがあり、さらに「ザ」は付いていないが、335-S カスタム、335-S スタンダード(Sはソリッド・ボディを意味する)といったモデルもカタログが制作された80年に登場した。

それらはすべて人気モデルのレスポールやSG、ES-335の外観を活かしながらもウォルナット材で製作されたシンプルなモデルで、外観は異なるが同じコンセプトでデザインされていた。

 シリーズの中でザ・ポールはかなりの数が出荷されたが、335-S スタンダード / カスタムなどはカタログが制作された80年に登場し翌81年には生産が完了しており、僅か2年足らずの出荷で姿を消した。

 元々レスポールとES-335はエレクトリック・アッセンブリや金属パーツ類は共通しており、ボディの外観と構造が小型ソリッドか大型セミアコースティックかでそれぞれのキャラクターを演出している。
しかしウォルナット・シリーズの場合ボディ構造と使用木材が同じため、小型のザ・ポールがあれば大きくて重い335-S スタンダード / カスタムを購入する必然性が見えなかったのかもしれない。

 これらのシリーズは、低価格帯でありながらセットネック・ジョイントを採用し、ソリッド・ギターの中でも軽量で取り回しに優れている。
またブラックウォルナットは形状が変化しにくく安定している木材としても知られ、生産から40年以上経過した現在でもライブ用ギターとして愛用しているギタリストもいる。

 そういえば、近年のギブソン・アコースティックの中にも、ローズウッドの代用材としてブラックウォルナット材をボディに採用した廉価モデルが増えているが、それも悪くないのかも…。