1936 GIBSON L-10

 ギブソンの歴史的なアコースティック・アーチトップ・モデルとして知られる「L-10」を紹介しよう。


 このモデルは、ギブソン初のFホール・モデルとして1922年に発表されたL-5に次き2番目にFホールを採用したモデル(それまでは全てラウンドホールやオーバルホール)で、1929年に発表され31年から同社のカタログに掲載された。 

 30年代初頭は、折しもオーケストラの中でバッキングを務めていたバンジョーが徐々にギターへと移行していった時期だった。
ギブソンが “カッティング・パワー” と称したFホール・モデルのブライトでよく通るサウンドは、オーケストラとの相性が良く一般のギタリスト達にも注目された。
しかし、当時Fホール・モデルはL-5のみであった。
L-5はギブソン社の要人だったロイド・ロアによって開発されたマスター・モデルであったため、高価で生産数も少なく手軽に入手ができる楽器ではなかった。

 そこでギブソンは、価格をL-5の約半分にまで押さえたL-10を手始めに、L-12(1930年)、L-7(1932年)と立て続けに新たなFホール・モデルを発表するとともに、既存のラウンドホール・モデルをFホール・モデルへとコンバートすることで、Fホール・モデルのラインナップを充実させていった。

 発売当初のL-10は、削り出しによる16インチ・ボディを採用し、ブラック・フィニッシュ、ドット・ポジションマークという極めてシンプルで装飾のないプレーンな仕様だった。
しかし、ボディ・サイズの大型化をはじめヘッドストックやフィンガーボードのインレイ、テイルピースの変更などを繰り返し、より高級感のある仕様へと移行していった。
L-10が写真の仕様となったのは1935年のことである。

 その後、Fホール・モデルの中でもL-4やL-50といったより低価格帯の製品に需要の中心が移行し、また1ランク上のL-12との価格差があまりなかったこともあり、L-10は1939年にその役割を終えた。

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