フェンダー・ギターと言われて先ず最初にイメージするのは、ストラトキャスターやテレキャスター、ジャズ・ベースなど、ソリッド・ボディのエレクトリック・ギターやベースだろう。
今回紹介する「FENDER Coronado Ⅰ」は、1966年に登場したフェンダー初のホロー・ボディ・モデルである。

 新製品などを紹介する「フェンダー・ファクツ」で1965年に告知され、翌66年に発売されたモデル、フェンダー・コロナド Ⅰ。
デザインを見ると、当時ギブソンが大きな成功を収めていたES-335の対抗馬として開発された製品であることが分かる。

 コロナドは、それまでバリエーション・モデルを持たなかったフェンダーとしては異例とも言えるほど豊富なラインナップが用意された。
シングル・ピックアップ仕様のコロナドⅠ(写真)、ダブル P.U.仕様のコロナド II、12弦仕様のコロナド XII、さらにシングル・ピックアップ仕様のベースとしてコロナド・ベースⅠも用意された。

 翌67年からコロナド IIのカラー・バリエーションとして、当時フラットトップに採用されていたワイルドウッド Ⅰ(レインボーグリーンズ)、ワイルドウッド II(レインボーブルーズ)、ワイルドウッド Ⅲ(レインボーゴールズ)とアンティグアⅡが登場(ワイルドウッドは、木が成長する過程で染料を投与して着色した木材)。
さらにダブル・ピックアップのコロナド・ベース Ⅱも加わった。
オプションとしてカスタム・フィニッシュと、当時コンサルタントだったレオ・フェンダーが開発したモデル専用のコロナド・トレモロも用意された。
写真は1966年に生産されたシェイデッド・サンバーストのコロナド I。

 Fホールを備えたダブルカッタウェイ・ボディには、ES-335を意識したデザインが採用されている。
リッケンバッカーで製品開発を行っていたロジャー・ロスマイズルがコロナドの開発に関わっているが、Fホールの形状を除くとあまりフェンダーらしさが感じられない。

 3プライのトップ、バックと7プライのリムすべてがメイプル合板で、プレス加工によってアーチが成型されている。
ブリッジをセットする位置のボディ内部には、トップとバックを繋ぐサポートブロックが組み込まれている。

 ネックはボルトオン・スタイルが採用され、フェンダーらしさが感じられる。
ローズウッドのラウンド・フィンガーボードがセットされたメイプル・ネックは、25-1/2インチのフェンダー・スケール。
Ⅰはアンバウンドのドットマーカー、IIがシングルバウンドのブロックマーカーとなっている。

 ブラック・フィニッシュされたヘッドは、フラットトップのデザインを受け継いでおり、ワイルドウッドやアンティグア、またカスタム・フィニッシュのモデルにはマッチングへッドが採用されている。

 フロント・ポジションにセットされたシングルコイル・ピックアップは、自社製ではなくロウ社に外注されたもので、初期型はフェンダーロゴが刻印されたメタルカバーがセットされている。

 新たな音楽シーンに対応するホロウ・ボディ・モデルとして多くのバリエーションを用意したコロナド・シリーズだったが、ユーザーの評価は厳しく4年弱という短期間の生産でプロジェクトは終了した。

 現在のヴィンテージ・ギター・マーケットにおいても、ほとんど見かけることのないレアなシリーズである。

Special Thanks to Woodman