1967 GIBSON Flying V

数あるエレクトリック・ギターの中には「デビュー当初は人気がなく、発売が終了してから再評価され、リイシュー・モデルが発売された」というモデルがある。
1958年から60年まで生産されたサンバーストのレスポール・スタンダードもある意味ではそのひとつだが、「GIBSON Flying V」ほどそれが極端なモデルはないだろう。

 1958年、ギブソンは “モダニスティック・ギターズ” と銘打ってフェンダー・ストラトキャスターなどに対抗すべく、斬新なデザインを採用した未来型エレクトリック・ギター「フライングV」と「エクスプローラ」を発表した。
これらのモデルは、ボディやネックにコリーナ(アフリカン・リンバウッド)という新たな木材(一部のラップスティールには使用されていた)を使用し、直線を活かしたこれまでにないモダンで大胆なデザインを採用していた。
しかし、あまりにも時代を先取りし過ぎたのか、期待とは裏腹に製品はまったく売れず、市場の反応があまりに悪かったためこの2モデルをすぐに生産終了にした。

 しかし60年代半ば頃から、市場でより個性的なエレキギターが注目されるようになり、フライングVはその格好のターゲットとなった。
しかし、オリジナルのVは元々売れていなかったため市場には無く、リイシュー・モデルの発売を望む声が上がった。

 そこでギブソンは、1966年にフライングVのリイシュー・モデルとしてそのセカンドバージョンを限定発売した。
このリイシューは瞬く間に完売し、ギブソンはその後も70年までの間に何度かリイシュー・モデルをリミテッド・エディションとして発売した。
さらに1971年、ボディにメダルオーナメントを埋め込んだフライングV、メダリオンを350本限定発売した。

 今回紹介するギターは、1967年に生産されたフライングVのリイシュー・モデルであるが、当時5年間にトータル175本しか生産されていない希少なギターである。

 写真がそのフライングVのリイシュー・モデル。
リイシューと言っても1958年に登場したオリジナルのVとはかなり異なったデザインで、ボディとヘッドがV型であることを除けばフルモデルチェンジと言えるほど仕様が変更されている。

 一番大きな変更は、ボディとネック材がコリーナからホンジュラス・マホガニーになったことだろう。
また、ボディも極端に薄くなり、SGと同じ1-5/16インチとなったが、実際にはもっと薄い個体もあった。
それに伴いネックジョイントのデザインや構造も変更され、大幅な軽量化に繋がった。

 また、オリジナルはテレキャスターのように弦がボディを貫通していたが、リイシューは板バネ式のバイブローラ・ユニットに弦をセットするスタイルとなり、機能性を意識したデザインとなっている。
そして、ピックガードが極端に大型化し、ピックアップ、コントローラー、スイッチ、アウトプットジャックといったパーツ類をピックガードに取り付けたことで、生産性とコストパフォーマンスも向上した。

 オリジナルはナチュラル・フィニッシュだったが、66年バージョンはチェリーレッド、ブラウンサンバースト、そしてスパークルバーガンディ(フェンダーでいうキャンディアップルレッド)の3色となった。

 写真は1967年製のフライングV。
レギュラーカラーではなく、ペルハムブルーというカスタムカラーにフィニッシュされたレアバージョンである。

 1971年のメダリオン以降、フライングVはほぼレギュラー・モデル扱いとなりインナップに加えられた。
70年代以降は、ギブソン以外でもフライングVをモチーフにしたV型モデルが各社から発売され、今やVタイプはスタンダードなデザインのひとつとして定着している。

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