トニー・ゼマイティスが製作したユニークなギターを紹介する「第2弾」は、ゼマイティスのフレットレス・ギター。

 写真は1987年に製作されたエレクトリック・ギターだが、ヘッドを見なければこれがゼマイティスであることはおそらく分からないだろう。
ボディ、フィンガーボード、ヘッドストックの突き板は、全てイレギュラーなメイプル製。
しかもケイラーのトレモロユニットを装着し、ロッキング・ナットも搭載している。
ピックアップには、日本のゴトー製と思われるブラックカバーのアクティブ・タイプを3つ搭載。

 トラスロッド・カバーを除けば、メタル装飾も一切見られず、ゼマイティスの象徴とも言える、ヘッドのエンブレムも取り付けられていないというかなりレアな仕様で構成されている。
いかにも80年代のハードロック・ギタリストが使用しそうな、なんともモダンなギターである。

 よく見ると、フィンガーボードのバインディングとポジションマークは赤いセルロイドを使用しているようで、その辺もイレギュラーだ。

 フィンガーボードを見ると、一般的なギターのようにフレットが打たれているようにも見えるが、実はこれフレットではなくフレットの位置に打たれているマーカーで、フィンガーボードに凹凸はなく、ストラトのように塗装もされている。

 フレットレス・ベースは、フェンダーを始め多くのブランドから発売され、市民権を得ているが、フレットレス・ギターというのはあまり商品化されておらず、有名なのはフランスのブランド、ヴィジェ「Excalibur II」というモデルくらいだろう。

 しかし、一般的なフレッテッド・ギターのフレットを抜いたりフレットの頭を削ったりすることで、フレットレス・ギターに改造しているコアなギタリストは稀にいる。 

 写真のギターは、そんなマニアからオーダーされたギターと思われる。
しかし、ギターの場合ベースほど弦振動にエネルギーがなく、サステインを稼ぐことが難しい。
また、ベースのようにスケールが長くないため、ピッチを安定させるのにかなりのテクニックが必要となる。

 さらにシングルノートだけでなく、和音を出そうと思うともう至難の技だろう。

 こんなややこしいギターを、わざわざ高価なゼマイティスに特注しなくても良さそうなものだが、そう思うのは貧乏人のやっかみだろうか…。