1950 FENDER Broadcaster

「 オリジナル・ギター・シリーズ   その ⑤」は、フェンダー・ブロードキャスターを紹介する。
量産型エレクトリック・ソリッド・ギターの歴史は、1950年にフェンダーから発売されたブロードキャスター(後のテレキャスター)に始まる。
それまでにもギブソンを始めいくつかのギター・メーカーからエレクトリック・ギターは発売されていたが、それらは全てホロー構造のギターにピックアップとエレクトリック・アッセンブリを搭載したモデルだった。
フェンダー社では、1940年代半ばからスティール・ギターやギター・アンプなどを発売していたが、スパニッシュ・スタイルのギター(抱えて弾く一般的なギター)は生産しておらず、これが初めての試みだった。

 アッシュ材のスラブボディにはカッタウェイ・デザインが採用され、21フレットまでのハイポジションへのアクセスを容易にした。
ネックとボディは金属製のネックプレーを挟んで太い4本のボルトでジョイントされ、コントローラー類は別工程で作業ができるように金属プレート上にまとめてセットされた。
1ピース・メイプル・ネックと呼ばれる斬新なネックは、フィンガーボードがなくネックに直接フレットを打ったとてもユニークかつ合理的な仕様で、このデザインはその後エレクトリック・ギターのスタンダードな仕様のひとつとなった。
ボディのアッシュ材は従来家具などに使用されていたものだが、テレキャスターでの使用により現在はスタンダードなトーンウッドとして知られている。
レオ・フェンダーは生涯ギターを弾くことはなかったが、全体的なフォルム、演奏性、サウンド、さらには生産性までを十分に考慮したデザインが採用されており、その巧妙さにはただ驚くばかりである。

 ブロードキャスターはグレッチ社の製品の名称に抵触していたため、翌1951年にテレキャスターと改名された。
以来テレキャスターはプロギタリストを中心に評判となり、愛用者が増えていった。
これを見たギブソン社は、エレクトリック・ソリッド・ギターに大きな可能性を見いだし、レスポール・モデルの開発に着手する。
それまでギターを製作したことがなかったフェンダー社がエレクトリック・ギターを製作し、さらに高く評価されたことは、ギブソンを始めとする当時のギター・ブランドに大きな衝撃を与えるとともに、新しいギター・シーンの幕開け意味していた。

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