エレクトリック・マンドリン

 トニー・ゼマイティスが製作したユニークなギターを紹介する「第3弾」は、なんとゼマイティスのエレクトリック・マンドリン!

 トニー・ゼマイティスは様々なスタイルのギターやベースを製作したことで知られるが、依頼があればギター以外の弦楽器も製作していた。


 写真は1970年代初期にロンドンのバラムにあった旧工房で製作されたエレクトリック・ソリッド・マンドリン。
一般的なマンドリンはアコースティック構造だが、こちらはソリッド・ボディを採用したエレクトリック・モデル。

 ヘッドストックと低音弦側のボディには、シンプルなスクロール装飾が施され、シングルカッタウェイのソリッド・アーチトップ・ボディを採用している。
ボディトップは美しいフィギュアド・メイプルの間に薄いウォルナット若しくはマホガニー材を挟んだ5ピース仕様で、緩やかなアーチ形状に仕上げられている。

 ネック材は不明だが、フィンガーボードはローズウッド。
一般的なマンドリンよりやや大きく、また太めのネックが採用されていて、マンドリン・プレイヤーというよりギタリストが使用する目的でオーダーしたマンドリンではないだろうか。

 カバードの黒いハムバッカーをひとつ搭載し、コントロールは1ヴォリューム、1トーンとシンプル。
フランスのマカフェリ・ギターを彷彿とさせる細い木製ブリッジ、オリジナルのブラス製テイルピースを採用している。
トラスロッドカバーはなんとスペードのデザインで、このマンドリン用に特別にデザインされたものだが、良く見るとブリッジとテイルピースのエッジ部分もスペードをイメージさせ、デザインに統一感がある。

 トニー・ゼマイティスがエレクトリック・マンドリンを何本製作したのかは不明だが、「ゼマイティス・ギター・オーナーズ・クラブ」会長であるキース・スマート氏も「トニー・ゼマイティスが製作したマンドリンはこの1本以外見たことがない」と語っており、極めて珍しいことは間違いない。

Special Thanks to Keith Smart