アコースティック・フレットレス・ベース

 トニー・ゼマイティスが製作したユニークなギターを紹介する「第4弾」は、ゼマイティスのアコースティック・フレットレス・ベース。

 「ゼマイティス」というと、エレクトリック・ギターもしくはアコースティック・ギターをイメージする人が多いが、トニー・ゼマイティスの時代から数は少ないがベースも製作している。

 写真は、1977年に製作されたアコースティック・フレットレス・ベース。

 ゼマイティスのエレクトリック・ベースは山内テツ、ロン・ウッド、グレッグ・レイクなど何人もの有名ベーシストが愛用したが、写真はスパニッシュ・スタイルのアコースティック・ベース。
ゼマイティスのアコースティック・ベースは極めて珍しく、ロニー・レーン、デイヴ・ギルモア、ポール・マッカートニー、ロン・ウッドがオーダーしているが、写真はなんとそのフレットレス・バージョン。

 18インチ・ワイドを越える超ジャンボ・ボディは、スプルース・トップ、メイプル・バック仕様(しかもバックとサイドには美しいフィギュアド・メイプルを使用)。
サウンドホールは竪琴を思わせるクラシカルなデザインが採用され、その外周には紫色の木製ロゼッタ・インレイが施されているというレアな仕様。

 ヘッドストックは外周がゴシック・インスパイアード・タイプで、Zエンブレムは見られずメタル製のトラスロッドカバーのみが装着されている。
ネック材は確認できないが、フィンガーボードには良質なエボニーが使用され、フレットレス仕様で仕上げられている。

 エレクトリック・ベースの場合は、アンプによって音量を自由に設定できるが、アコースティックは当然生音が全てとなる。
またフレットレス仕様の場合どうしても音量とサステインに限りがあるため、この手の楽器を製作することはかなり難しい。

 また、アコースティック構造でありながらベース弦の強いテンションに耐えられる構造でなければならないこともあり、このタイプのピュアアコースティック・ベースはほとんど製作されてこなかった(エレクトリック・アコースティック・ベースはいくつも存在する)。

 トニー・ゼマイティスは1950年代からアコースティック・ギターの製作を行い、アコースティック楽器の構造を熟知した製作家として知られているが、彼以外に70年代にスパニッシュ・スタイルのフルアコースティック・ベースを製作した製作家は、ほとんどいないだろう。

Special Thanks to Keith Smart