③バナー型、その他

 ゼマイティス・ギターが日本で最初に注目されるようになったのは、1970年代の後半だが、1976年に発刊された『Player』誌別冊『楽器の本 1976』には、すでにゼマイティス・ギターのミニ特集が掲載されていた。

 そこには、フェイセズやフリー、後にクリエイションなどにも在籍した名ベーシスト、山内テツが愛用するゼマイティス・ベースが大きく紹介されていた。

 当時日本ではほとんど知名度が無かったゼマイティスだが、その完成して間もない山内テツのゼマイティス・ベースにはバナー型のエンブレムがセットされ、見る人に大きなインパクトを与えた。

 最初の写真は『楽器の本 1976』に掲載されたゼマイティスの記事。アールデコ調の立体的なヘッドストックの上部に、バナー型のエンブレムがセットされ、トラスロッドカバーには本人の名前もエングレイブされている。

 トニー・ゼマイティスが製作したギターやベースの中には、このバナー型エンブレムも時々見受けられるが、日本で製作された製品の中にもかつてバナー型がセットされた製品も製作されている。

 2つ目の写真は、日本で製作されたロン・ウッドのシグネチャー・モデルのヘッドストック。バナー型のエンブレムが使用され、その下にはシャチホコのような怪魚のメタル装飾が施されている。

 続いて紹介するのは、1980年に製作されたアコースティックのカスタム・デラックスにセットされたアールデコ・タイプの超大型エンブレム。


ここまで大きいとエンブレムというより、メタルフロントのヘッド・バージョンといった印象で、トラスロッドカバーも一体化したデザインで製作されている。
この大型のアールデコ・タイプのエンブレムはかなり珍しい。

 ヘッドストックだけを見ると、アコースティック・ギターとは思えないが、ゼマイティスの場合エレクトリックとアコースティックとで共通したデザインが使用されることも多く、アコースティックにもロックな感性が感じられる。

 最後はさらにアートなエンブレム。
これをエンブレムと呼んでいいのかはやや疑問だが、ヘッドストックの上の部分にワニとも大トカゲともゴジラともつかない不思議な怪獣型のメタルプレートがデザインされている(実際はワニをモチーフにしたデザインのようだ)。写真は、キース・リチャーズの愛用で知られるゼマイティスの5弦ギター、マカブラーのレプリカ・モデル(オリジナルのマカブラーは火災で焼失した)。

 熱烈なストーンズ・ファンが80年代初頭にオーダーした特別のカスタム・モデルで、マカブラーと同様にワニのエンブレムが再現されている。
ちなみにオリジナルは5弦仕様だが、レプリカ・モデルとして6弦仕様のマカブラー・タイプも製作されたことがある。

 やはり特注による製品だが、日本でも2006年に写真と同じデザインのヘッドを採用したマカブラー・タイプのレプリカが製作され、2007年のゼマイティス・カタログに SU-MACABRE 5として掲載された。
キース・リチャーズ本人のギターも含め、数本製作されたようだ。
もちろんボディのダイナミックなインレイ・ワークなどもオリジナルのマカブラーと同様のデザインが採用されている。

Special Thanks to Keith Smart