①ダイヤ型

 多くのゼマイティス・ギターのヘッドには、メタル製のエンブレムが付いている。
その多くはダイヤ型と呼ばれるもので、菱形のメタルプレートの中央に大きく「Z」の飾り文字が刻まれ、その周囲にも装飾が施された風格のあるデザインだ。

 ゼマイティスの歴史を紐解くと、かつてはダイヤ型だけではなくいろいろなデザインのエンブレムが使用されており、歴史的な製品ではより個性的なものを目にすることがある。

 今回から数回に亘り、ゼマイティス・ギターの象徴でもある そのメタル・エンブレムのバリエーションを紹介していこう。

 まず最初は「ダイヤ型」のエンブレムから。
これは現在最もポピュラーな仕様として知られ、菱形のアルミ合金プレートに「Z」の文字が彫金されている。
プレートのエッジ部分は斜めにベベルエッジ加工が施され、立体的で風格のあるデザインといえる。

 トニー・ゼマイティスが当初製作したギターの一部にはシルバーで作られたエンブレムも多く、文字はすべて彫金師のダニー・オブライエンがひとつひとつ手彫りしていた。

 2004年頃から日本でギターが製作されるようになった以降は、ダニーの手彫りしたエンブレムを元に機械加工で再現したものが採用されている。

 近年はメタル・エンブレムとは別に、ホワイトパールを成型したシェル・タイプのエンブレムも採用され、一部のエレクトリック・モデルやアコースティック・モデルに使用されている。

 写真は、2005年に日本で製作されたアコースティックのスペシャル・モデル。
実はこれ、トラスロッドカバーを見ると分かるように、エリック・クラプトンのために特別に製作されたギターである。

 クラプトンは入手後6年程このアコースティックを所有していたが、2011年にNYで行われたボナムズのギター・オークションに出品され、エレクトリック・モデルと共に売却された。
このアコースティック・ゼマイティスは、ボディ内部に金貼りが施されるなどとてもユニークな仕様で、特別なカスタム・モデルとして2本製作されたが、市販されることはなかった。

 もう一つの写真は、1987年に製作されたパールフロントのカスタム・デラックス。
そのヘッドには、ダニー・オブライエンが手彫りしたダイヤ型のエンブレムがセットされ、豪華絢爛な仕上がりとなっている。