1956 GIBSON ES-350TN

ギブソン ES-350Tはギブソン初のシンライン・シリーズのひとつで、バードランドやES-225と共に1955年に発表された。
その前身となったモデルは、1947年から56年まで生産されたギブソン初のカッタウェイ・デザインを採用したES-350で、ボディの厚さとスケールをアレンジすることでES-350Tとして登場した。

 写真は、出荷初年度にあたる1956年に生産された「GIBSON ES-350TN」。
翌57年にハムバッキング・ピックアップが採用されたため、シングルコイルであるP-90が搭載されているオリジナル・バージョンは数が少なく、またその中でもナチュラルブロンド・フィニッシュとなると、更に希少な存在である。

 オプションとして当時用意されていたビブラート・ユニットがセットされているが、アームバーの形状などから見ておそらくオリジナル仕様ではなく、後から取り付けられたものだろう。

 17インチ・ワイドの大型メイプル・ホロウ・ボディであるが、2-1/4インチ・ディプスの薄型に仕上げられている。
登場から1960年まで、写真のラウンド・ベネチアンカッタウェイが採用されている。
トップは基本的にメイプルのラミネート材をプレス加工することでアーチトップを成型しているが、中には上位モデルのようにスプルース単板の削り出しトップを採用したES-350Tも存在する。

 23-1/2インチのショート・スケールを採用しているのも特徴的で、センターに薄いマホガニーを挟んだメイプル2ピース・ネックはスリムなグリップに仕上げられている。
ブラジリアンローズウッドのシングルバウンド・フィンガーボードには、白蝶貝によるダブルパラレログラムル・インレイが施されている。

 アジャスタブル・ポールピースを採用したP-90シングルコイル・ピックアップは、両側に取り付けるための耳がついているドッグイヤー・タイプがマウントされている。

 写真のギターは、1980年3月にロンドンで行なわれた『ロンドン・ロック・オークション 1980』において、エリック・クラプトンが出品した20本のギターの中の1本で、日本人が落札した。
クラプトンは、1999年の『クロスロード・ギター・オークション』でナチュラルのES-350TNを出品し、2004年のオークションでもサンバーストのES-350Tを出品したが、それらは全て1956年製であることは大変興味深い。 

Special Thanks :「Player」/ Junichi Yamaguchi