エリック・クラプトンの2022年US東海岸ツアーは、9月18日、19日の2日間、NYマディソン・スクエア・ガーデン公演がファイナルとなった(その後、今年春に本人がコロナに罹ったため延期されていたヨーロッパ公演を4日間行った)。

 そのUS公演と追加ヨーロッパ公演において、エリックは何曲かのアコースティック・セットでヴィンテージのギブソン L-5を使用しており、これがエリック・ファンやヴィンテージ・ギター・ファンの間で話題となっている。

 エリックは昔から何本かのL-5を所有しており、ステージでそれを使用したのは今回が初めてではないが、今回使用したのはなんと1931年製という超ヴィンテージ。

 L-5は1922年にロイド・ロアーが設計したギブソン・アーチトップのルーツとも言える歴史的モデルとして知られ、またフラッグシップ・モデルの代表としてギブソンを象徴する高級モデルである。 

 しかもこのL-5は、エリックが長年リスペクトするシンガーソングライターであり、親しい友人でもあるJ.J.ケール(1938〜2013年)からプレゼントされたいわく付きのギターだった。

 J.J.と言えば、長年ボロボロの改造ギターやカシオのギターシンセなどをステージやレコーディングで愛用しており、かなり個性的なギターを使用するギタリストというイメージが強い。
そんな彼が1931年製の超王道ヴィンテージを所有し、さらにそれをエリックにプレゼントしたという事実は、まさしく驚きに値する。

 エリックが2005年にJ.J.の自宅に遊びに行った際に古いギブソン L-5を見つけたそうで、J.J.はそれをあっさりエリックにプレゼントしたという。
エリックのコンサートで定番となっている「コケイン」はJ.J.の作詞 / 作曲だが、彼の音楽性が再評価される切っ掛けとなった楽曲でもある。
それにしても、J.J.の懐の深さと2人の絆の強さが良くわかるエピソードといえる。

 写真はエリックが所有する1931年製のL-5。
とても90年以上前に製作されたギターとは思えないほど良いコンディションで、今回のUSツアーのアコースティック・セットの中で何曲かを披露した。
しかもその時に使用したアンプは、1950年後期に生産されたフェンダー・プリンストンで、会場のファンはその素晴らしいヴィンテージ・サウンドに酔いしれた。

(エリック・クラプトンのUSファイナル・ツアーのレポートは、12月2日発売の『Player』誌 2022年10/11/12月号に大きく特集されています)

Special Thanks to Dan Dearnley、Tony Edser、Hiro Kamei