②シールド型とアロー型

 ゼマイティスのヘッドストックにセットされているエンブレムを紹介するミニ特集の第2弾は「シールド型」と「アロー型」。

 現在のゼマイティス製品には、基本的にダイヤ型のエンブレムが使用されているが、2000年頃までのトニー・ゼマイティスが製作したギターには、シールド型(盾型)のエンブレムも度々登場していた。

 写真は、1980年にトニー・ゼマイティスが製作したアコースティックの12弦カスタム。
エンブレムの左上には小さな窪みが見られるが、ヘッドストックと共通するデザインとなっているのが特徴だ。
エンブレムの中央には「Z」の飾り文字がレイアウトされ、その周囲にはダニー・オブライエンによる唐草彫りが施されている。

 エンブレムのエッジ部分にはベベルエッジ加工が施され、手彫りされた溝に黒い塗料を擦り込むことで、エングレイブのラインがハッキリと浮かび上がっている。
日本で製作された製品の多くにはダイヤ型が使用されているが、2022年に発売されたアコースティック、AAL-2000 Lotus-Eには珍しいシールド型が採用されている。 

 もう一つの写真はアロー(鏃 / ヤジリ)型のエンブレム。
このデザインは古く、70年代の初期のエレクトリック・モデルやその後のアコースティック・モデルなどによく使用された。

 写真は70年代前半に製作されたエレクトリック・モデル。
写真のエンブレムはアルミ合金製ではなく、シルバー製のプレートが使用され「ZEMAITIS」のブランド名が縦にエングレイブされたヴァーティカル・タイプ。
さらに、その周囲には唐草模様ではなく可愛らしいフラワーがデザインされたレアなバージョンだ。

 日本で製作された製品の中にも、S24 MT FRやB22 MT DCP、SUJ-101-LTD13など、2014年頃までの製品の一部にはアロー型エンブレムが使用されていた。
近年では、フラッグシップ・モデルとなるザ・ポートレイト・シリーズに使用され、その存在感と個性をアピールしている。

 シールド型やアロー型は、中世ヨーロッパを彷彿とさせるデザインでもあり、アメリカのギター・ブランドには見られない英国らしいアイデンティティが感じられる。

Special Thanks to Shozaburo Nagata