ボディ・サイズが31種類!

「こんなマーティン見たことない! シリーズ」の最後として、マーティンの「アルターネイティヴ」というアルミ・ボディを採用したユニークなアコースティックを紹介したが、さらに〈番外編〉としてボディ・スタイル、ボディ・サイズに関して紹介しよう。

 これまでにマーティン社から発売された製品が何モデルあるかは定かではないが、細かく分類するとおそらく1000モデルを超えているだろう。1833年から続く長い歴史の中で、驚くほど数多くのモデルが誕生しては消えて行ったマーティンだが、全体の7割近くは過去30年間に登場したモデルで、現代のギター・ブランドとして市場から強く支持されていることが分かる。

 そんなに多くのモデルを全て覚えることは不可能だが、歴史的なモデルの場合は、ボディ・デザイン(サイズ)と使用されているボディ材や装飾(スタイル)とを組み合わせてモデル名ができているので、そのルールを理解しておけばモデル名からある程度は製品がイメージできる。

 モデル名の頭に付いているアルファベットや数字はボディ・サイズを示している。
そして後に続く数字が木材の種類や装飾類、製品としてのグレードを示しているという基本的なルールがある。
例えば、「D-18」「D-28」「D-35」「D-45」の場合、同じドレッドノート・サイズで、「-18」はシンプルなマホガニー・ボディ、「-28」はシンプルなローズウッド・ボディ、「-35」はローズウッドの3ピース・バック、バウンドネック、「-45」はローズウッド・ボディに豪華なインレイや装飾が付いた仕様、となる。
また「D-18」「000-18」「00-18」「0-18」の場合は、ボディ・サイズは異なるが、使用されている木材や装飾類は全て同じ仕様となる。

 では、マーティンにボディのサイズは何種類あるのだろう? マーティン社の資料によれば、ウクレレのボディも含めると、トータルで31種類のサイズがある。
その中でよく知られているのは「D / ドレッドノート」「000 / トリプル・オー」「00 / ダブル・オー」「0 / シングル・オー」など。
その他にも「Size 1」「Size 2」「Size 3」「Size 3-1/2 」「Size 5」「Size 1/2」「Size 1/4」といった歴史的な小型モデルがいくつもあり、「D」よりも大きな「0000 / クアドラ・オー」や「M」なども存在する。

 では、モデル名後半の数字(スタイル)にはとのような種類があるのだろう。
「-15」「-17」「-18」「-21」「-16」「-28」「-35」「-41」「-42」「-45」などは訊いたことがあるかもしれない。
あまり知られていないスタイルとしては「-1」「-2」「-3」「-7」「-9」「-24」「-25」「-30」「-33」「-34」「-36」「-37」「-38」「-40」「-50」「-65」「-68」「-70」「-76」「-85」「-89」「-100」などがあるが、大半のモデルはすでに廃盤となっている。

 近年は、これまでになかったまったく新しいモデルが次々に誕生しているため、伝統的なルールだけではカバーできないほどの製品が増えている。
そのため、新しいシリーズ名や特殊な仕様などを頭文字に省略してモデル名の中に組み込んでいる。
例えば、アーティスト名の名前やイニシャルが入ったシグネチャー・モデル(000-28ECなど)、C(カッタウェイ仕様)、HD(ヘリンボーン・ドレッドノート)、V(ヴィンテージ仕様)、X(ハイプレッシャーウッド仕様)、GE(ゴールデンエラ・シリーズ)、CMT(カスタム・モデル)、JR(ジュニア・シリーズ)、DPC(ドレッドノート・パフォーマンス・カッタウェイ)、GPC(グランド・パフォーマンス・カッタウェイ)など、加速度的に増えている。

 1980年代までは、プロギタリストのためのアイテムとして知られたマーティン・ギターだが、近年はそれに加えて、コレクターに向けた特別なカスタム・モデルやヴィンテージ・レプリカ・モデル、シグネチャー・モデルや記念モデル、ビギナー向けの廉価モデル、さらには遊び心満載の超個性的なモデルに至るまで、あらゆるニーズに対応した製品ラインナップが用意されている。
プロギタリストとビギナーでは、製品に求める価値観がまったく異なるが、そのどちらにもワクワクさせる製品を提供しているマーティン。
こんな素敵なブランドは、世界にいくつもない。