1938 MARTIN D-45

マーティンのフラッグシップ・モデルとして知られるD-45は、1933年に登場した。
ジーン・オートリーという当時人気を博したシンギング・カウボーイのカスタム・モデルとして特別に製作されたのがその起源である。
一般的なドレッドノートをさらに縦長にした大型12フレット・ジョイントのドレッドノート・ボディを採用したカスタム・モデルだった。
この年は、マーティン社の創立100周年にあたり、マーティンとしては記念すべき年にこれまでに無かった新たなモデルを制作したいと言う思いがあったのだろう。

 写真は1938年に生産されたD-45。オリジナルのD-45が製作されたのは、1933年から42年までの9年間で、僅か91本しか作られていない。
50年代末のギブソン・サンバースト・レスポールが1500本ほど生産されたことを考えると、このオリジナルD-45がいかに希少であるかが分かる。
当初はカタログ・モデルではなく、特別なギタリストに向けたカスタム・モデルとしてのみ製作され、カタログに登場したのは1930年代後半である。

 写真の個体は、ポジョンマークがスタンダードなヘキサゴン・インレイではなく、スノウフレイクスやスリットダイヤモンド、キャッツアイなど古いデザインのインレイが使用されている極めてレアな仕様。
オリジナルD-45の中でも、この仕様の個体は数本しか存在しない。
ヘッドストックにはスタイル45を象徴するバーチカルロゴと呼ばれる縦形のロゴが採用されている。
オリジナル・モデルは、ロゴをアバロンからひとつひとつ手作業で切り出しているため、ロゴにやや個体差がある。
1968年以降の再生産モデルと比較すると、やや細めに仕上がっているのが特徴だ。
ボディ外周にはアバロン・トリムが施され、美しく虹色に輝いているが、当時のモデルには日本産のアワビが使用されており、メキシコ産などと比べると繊細でパターンが細かいのが特徴となる。

 ボディトップはアディロンダック・スプルース、バック&サイドはブラジリアン・ローズウッドが使用され、その外観の美しさもさることながら、重くタイトな低音域から鈴鳴りと呼ばれる煌びやかな高音域まで、正しくリッチでダイナミックな45サウンドが堪能できる。

Special Thanks :「Player」、MAC GALLERY