1930 MARTIN OM-28

1929年に登場したマーティンのOMモデルは、現代のギター・シーンに多大な影響をもたらしたモデルとして知られる。
それまでのマーティン・ギターは、すべて12フレット位置でボディとネックがジョイントされていて、ミディアム・スケール、スロットヘッドが基本的なスタイルだった。
それらは、いわばクラシック・ギターからの流れが感じられるデザインといえる(実際にマーティンでは、1920年代半ばまでスティール弦ではなくガット弦が標準仕様だった)。
OMモデルの登場により、14フレット・ジョイント、ロング・スケール、ソリッドヘッド、スティール弦など、現代マーティンの主要な仕様が定まったのである。

 OMモデルは、1929年にバンジョー・プレイヤーのベリー・ベクテルがカスタム・オーダーしたギターがそのルーツである。
彼はネックを長くするために14フレット・ジョイントとバンジョー・ペグ(フリクション・ペグ、ストレート・ペグ)をリクエストした。
14フレットジョイントの機能的な仕様に新たな可能性を見いだしたマーティンは、1930年代に殆どのモデルを12フレットから14フレット・ジョイントに、さらにスロットヘッドからソリッド・ヘッドに仕様を変更した。
こうしてOMモデルは現代マーティンの礎となった。
その後1934年にOMの仕様は000へと引き継がれ、現在も人気モデルとして生産されている。
OMと000では、スケールやナット幅、ピックガードの形状などが異なるが、基本的に同系列のモデルで、ボディ・サイズはほぼ同じ(000の方がアッパーバウトが僅かに大きい)。

 写真は1939年に生産されたOM-28。
OMモデルの最も初期の製品で、ベリー・ベクテルがリクエストしたバンジョー・ペグが採用された極めて希少なギター。
OMのピックガードは000と比べて一回り小さいのが特徴で、000とOMとを見分ける際のサインのひとつともなっている。

 OMが000に引き継がれたことで、一部のカスタムモデルを除いてOMは近年までレギュラーラインで生産されることはなく、人々の記憶からも忘れ去られていた。
しかし、エリック・クラプトンがあの『アンプラグド』でヴィンテージの000とOMを使用したことで000が大ブレイクし、それに引っ張られる形でOMも脚光を浴びるようになった。
現在OMは、コアなファンに向けたモデルが少数生産されている。

Special Thanks :「Player」、MAC GALLERY