1964 GIBSON Firebird Ⅰ

1963年秋に発売されたギブソン・ファイアーバード・シリーズは、1950年代末のモダニスティック・シリーズの第2弾として登場した。
開発コンセプトは「フェンダー・ギターのようなモダンな外観とサウンドを持ちながらも、優れた技術力を有するギブソンでしか生産できないモデル」だった。
最初のモダニスティック・シリーズは、1958年に登場したフライングVやエクスプローラだったが、その失敗の屈辱を晴らすべく、外部の有名デザイナーとのコラボレーションによる一大プロジェクトとして企画された。
しかし思いのほかセールスが伸びず、2年後の1965年に早くもフルモデルチェンジを行うがやはり市場の理解は得られず、ファイアーバード・シリーズは1970年代に受け継がれることなく静かに幕を閉じた。

 写真は、シリーズの中で最もシンプルな仕様の「Firebird Ⅰ」(1964年製)である。
このシリーズには「Ⅰ」の他に、デュアル・ピックアップを搭載した「Ⅲ」と「V」、最も豪華な仕様でトリプル・ピックアップを搭載した「Ⅶ」の4モデルが用意された。
ギブソン初となるリバース・ボディシェイプとリバース・ヘッドを採用し、ネック・スルー・ボディ、ミニハムバッカー(P-720 ピックアップ)、バンジョースタイルのチューナーなど、個性的な仕様が大きな特徴となる。

 写真は、60〜70年代にエリック・クラプトンが所有していた個体で、ピックガードの一部は欠けているが、それ以外はかなり良いコンディションを保っている。

 1980年2月に、イギリスのロンドン・ミュージック・オークションズが主催した『ロンドン・ロック・オークション 1980』にクラプトンが所有していたギターを20本出品した中の1本で、日本人が落札した。
クラプトンは60年代中期から70年代にファイアーバード Ⅰ を愛用していたことで知られるが、彼は何本か同じモデルを所有しており、その中の1本である。
ギターケースには『ロンドン・ミュージック・オークションズ』の証明書も入っており、そこには1963年製と書かれているが、実際は64年製である。

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