1971 VELENO Original

コラム「ヴィンテージ・ギター・オリジナル・シリーズ その 42」で、かつてエリック・クラプトンが所有していた「1964年製ギブソン・ファイアーバード Ⅰ」を紹介した。
今回紹介するギターは1971年製の「VELENO Original」だが、これもやはりクラプトンが1970年代に所有していた個体である。
ファイアーバード Ⅰと同じく『ロンドン・ミュージック・オークション 1980』にクラプトンが出品した20本のギター・コレクションの中の1本で、ある日本人のファンが落札して日本に持ち帰った。 

 ヴェレノ・ギターは、1970年代初頭にアメリカ・フロリダ州にあるアルミニウム製の収納ボックスメーカーに勤務していた、ジョン・ヴェレノによってに設立された。
ヴェレノはギター講師もしていたほどのギター愛好家で、1960年代後半から仕事で得たアルミ加工のスキルを活かして趣味の延長としてアルミ製ギターの製作を開始した。
彼が製作するギターは、ボディはもちろんのことネックやフィンガーボードも全てアルミニウム製で、メッキが施されたボディはまるで鏡のように輝いていた。

 ヴェレノは70年頃から本格的なアルミ製ギターの製作に乗り出し、70年代のロック・シーンにおいて当時人気を博していたTレックスのマーク・ボランに愛用されたことで一躍脚光を浴びた。
しかし、量産化を行なうことはなく最後までジョン・ヴェレノが一人でギターを製作し、ギターショップではなく直接ミュージシャンに販売するというスタイルに拘り、76年までの間に200本近いギターを製作販売して短い歴史の幕を閉じた。

 写真のギターは、ネック側のストラップボタン近くに刻印されているシリアルナンバーが「2」であることから、最も初期の製品であることが分かる。
またテイルピースの直ぐ下には「Eric Clapton  / J.V.」とエングレイヴが見られ、このギターがクラプトンのために製作された特別な1本であることが窺える。

 この製品で特徴的なのは、ヘッドストックのデザインがペンギンを横から見たようなペンギン・ヘッドであること。
一般的なヴェレノは「バルタン星人」の愛称で呼ばれるヘッドの先端が大きく2つに分かれたV字型デザインだが、極初期には写真のペンギン・ヘッドの製品も製作されていた。
どちらのヘッドにもヴェレノの奥さんが好んだ赤いルビーを模した装飾がワンポイントで施されている。 

 ボディとネック / ヘッドストックは6061アルミ合金を使用。
写真は初期の21フレット仕様だがその後22フレット仕様に変更され、フィンガーボートはアルミを黒く加工した仕様へと変更されるなど、いくつかのヴァージョンが存在する。

 写真のピックアップは初期のデュアルモンド製で、アジャスタブル・ポールピースを採用したシングルコイル。
コントローラーは2ボリューム、1トーンというシンプルな仕様になっている。その後は以前紹介した製品のように、2つのギブソン・ハムバッキング・ピックアップが搭載された4コントロール仕様に変更された。
写真のスタンダード・モデルの他に、極僅かミニサイズのアルミ製ギターも製作された。

 アルミニウム製というと、キンキンした金属的なサウンドをイメージする人が多いだろう。
しかしヴェレノのボディはホロー構造になっていて、想像しているよりは太く力強いトーンを出力するロックなギターである。

Special Thanks :「Player」/ Junichi Yaguchi