c.1920 GIBSON Style “O” 

「GIBSON Style “O”」は、ギブソン社が設立された1902年からハープギターのスタイルUなどと共にラインナップされた最も古いモデルのひとつとして知られる。
最初期の “O” は、このモデルの大きな特徴となるボディのスクロール装飾やカッタウェイが見られないシンプルなデザインで、それまでオービル・ヘンリー・ギブソンが製作していたアーチトップ・マンドリンやマンドセロなどに近いデザインだった。

 そして1908年にスクロールとカッタウェイが付いた写真のデザインにフルモデルチェンジしたが、最初期のオリジナル・モデルは極端に生産量が少ないこともあり、一般的にスタイル “O”というと、このセカンド・ヴァージョンを指す場合が多い。

 1900年代初頭は、ギター以上にマンドリン属の弦楽器がポピュラー・ミュージックで広く使用され、ギターはマンドリン・オーケストラをサポートする楽器として使用されることも少なくなかった。
元々マンドリンの製作家だったオービル・ギブソンは、創立当初マンドリンの生産に力を注いだが、その後ギターが音楽シーンの中核になると、ギターの生産に力を注ぐようになる。

 写真のスタイル “O” は、そんないにしえの時代に生産された最初期のアーチトップ・モデルで、ギブソンならではの歴史的なマンドリンの流れを色濃く残した個性的なモデルである。

 ボディ左上のスクロールは、オービル・ギブソンがまだマンドリンの個人製作家だった1890年代に採用されていたデザインを模している。
ボディのトップとバックは、厚みのあるスプルースとメイプルをハンドクラフトによってグラマラスに削り出され、まだアジャスタブル・トラスロッドが考案される以前のネックは極太のトライアングルで、この時代ならではの醍醐味が味わえる。

 写真は1920年代前半に生産されたスタイル “O” で、1922年まで同社のカタログに掲載され、その後も1925年まで生産が続けられた。
創業当初に登場し、23年間ギブソンの歴史を築いたモデルであると同時に、ギブソンの長い歴史のスタートを華々しく飾ったモデルとして大切に扱っていたことが窺われる。

 “O”はかなり高価なモデルだったこともあり、商業的な成功という意味ではあまり望めなかったが、次世代に花を咲かせたギブソン・アーチトップの礎となり、またギブソンの高い技術力と楽器としての魅力を広く示すモデルとして、現在も高く評価されている。 

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