1955 / 1957 GRETSCH PX6120

Chet Atkins Hollow Body

グレッチを代表する「PX6120」は、モダンカントリー・ギターの巨匠でありアメリカを代表するフィンガーピッカーとして知られるチェット・アトキンス(1924年〜2001年)のシグネチャー・モデルとして、1954年に登場した。
当時同社のカタログには「Chet Atkins Hollow Body」と紹介されていた。

 1950年代、チェットはすでにギタリストとして高く評価されていたが、彼が愛用していたシグネチャー・モデルに寄せられる関心は、それほど高くなかったようで、60〜70年代に一部のフォーク・ロック系ギタリストが使用している程度に過ぎなかった。

 このモデルが一躍脚光を浴びたのは、やはり1980年にデビューしたストレイ・キャッツが世界的に大ブレイクし、それに続いて巻き起こったネオロカビリー・ブームである。
ブライアン・セッツアーの激しく切り裂くようなギター・プレイとサウンドは、これまでのグレッチのイメージを大きく変えていった。ブライアンのクールなギターに魅せられ、80年代から90年代に掛けてロカビリー系やロック系のギタリスト達がこぞってPX6120を買い求め、一気に人気モデルとなった。

 写真は、デビューして間もない1955年製(左)と1957年製(右)のPX6120である。

 ラウンド・カッタウェイを採用した15-1/2インチ・ワイドのホロー・ボディは、トップ、バック、サイドの全てがラミネート・メイプルで作られている。
全体がアンバーレッドと呼ばれる西部の夕焼けを彷彿とさせるシースルー・ウェスタン・オレンジにフィニッシュされているが、他のブランドでは見ることのない独自なカラーである。

 ボディの厚みは年代毎に3バージョンあり、写真の55年と57年はその中で最も厚い2-3/4インチ。
その後59年に2-1/2インチ、61年に2-1/8インチとだんだん薄くなっていく。バインディングが施されたFホールは、ギブソンなど一般的な製品よりも一回り大きいのも特徴のひとつ。
グレッチ・ギターの象徴でもある “G” ブランドは、56年まで採用された仕様で、右側の製品には見られない。

 24-3/4インチ・スケール、14フレット・ジョイント、薄いエボニーのセンターストリップを挟んだ2ピース・メイプル・ネックを採用。
ローズウッド・フィンガーボードには、ウェスタン・モチーフが描かれたブロックインレイ(左)、56年から採用された凸型のハンプトップ・インレイ(右)が施されている。 

 ボディにダイレクトマウントされているグレッチ・ダイナソニック・ピックアップは、ディアルモンド社のシングルコイル・タイプで、57年にハムバッキング・タイプのフィルタートロンに変更された。

Special Thanks :「Player」/ Toru Iwai