1964 FENDER Stratocaster

ストラトキャスターは、渋い2トーンサンバーストのヴィンテージ・カラーも良いが、ギター・マニアの中には、希少なレアカラーに特別な思いを馳せるコレクターもいる。
今回紹介する1964年製の「FENDER Stratocaster」は、レイクプラシッドブルーという人気のカスタムカラーにフィニッシュされた美しい個体で、ストラト・マニアなら垂涎の的となる1本である。
今回は、写真の64年製を例に挙げながらストラトのカスタムカラーについて紹介しょう。

 フェンダー・ストラトキャスターの初期のボディカラーは、1954年の当初から58年まで採用されたオリジナル2トーンサンバーストであるが、その他にも有料のオプションとしてテレキャスターのレギュラー・カラーであるブロンドとブラックの2色がカスタムカラーとして用意されていた。

 1958年半ばに2トーンサンバーストに赤を加えた3トーンサンバーストが採用されたが、カスタムカラーの一部はすでに同年春から採用され、それ以来カラーバリエーションが増えていった。
フェンダー社ではカスタムカラーをセールスポイントのひとつと考え、58年以降積極的に展開している。
当時レオ・フェンダーの片腕的存在であり、後にレオと共にG&Lを立ち上げるジョージ・フラートンが中心となって規格化が進められた。

 ギブソンは、同じ1958年の半ば頃からレスポール・スタンダードに鮮やかなチェリーサンバースト・フィニッシュを採用して対抗したが、フェンダーはストラトだけではなく全てのモデルでカスタムカラーを展開した。
そのため60年代以降生産された製品にはカラフルなものも多く、カスタムカラーは時代を象徴するフェンダーのキャラクターとなった。

 50〜80年代に採用されたカスタムカラーは、トータルで24〜25色あったが、カラーによって採用された時期がまちまちで、頻繁に入れ替わりがあった。
オーダーの多い人気のカラーはそのまま継続し、不人気のカラーは短期間で終了する入れ替えシステムで、長いカラーだと20数年、短いカラーだと1〜2年で終了したものもある。
フェンダーではディーラー用にカラーチャートを製作したが、頻繁にカラーが変わるため新しいカラーチャートが何度も製作された。

 採用されたカラーを年代の早い順に並べてみると、フィエスタレッド(1958年〜69年)、オリンピックホワイト(58〜80)、ゴールド・メタリック(58〜59)、レイクプラシッドブルー・メタリック(58〜59)、ダコタレッド(58〜69)、ブラック(58〜84)、ダフネブルー(60〜65)、ショアラインゴールド・メタリック(59〜65)、バーガンディミスト・メタリック(60〜65)、フォーラムグリーン(60〜69)、インカシルバー・メタリック(60〜65)、シェルピンク(60〜63)、シャーウッドグリーン・メタリック(60〜65)、ソニックブルー(60〜72)、サーフグリーン(60〜65)、キャンディアップルレッド・メタリック(63〜73)、ブルーアイス・メタリック(65〜69)、チャコールフロスト・メタリック(65〜69)、ファイアーミストゴールド・メタリック(65〜71)、ファイアーミストシルバー・メタリック(65〜71)、オーシャンターコイス・メタリック(65〜71)、タールグリーン・メタリック(65〜69)、ブロンド(70〜82)、ナチュラル(72〜82)。カラーの約半分がメタリック系である。

 カスタムカラーの登場は、60年代の音楽シーンを象徴する明るくカラフルなサーフィンミュージックやポップスの影響が強く感じられ、当時の華やかなアメリカを象徴している。
また、自動車産業とも深く関係しており、多くのカスタムカラーが自動車に使用されていた塗料を使用していたようで、メタリック系カラーが多いのも頷ける。

 写真のレイクプラシッドブルーは、キャンディアップルレッドに続いて人気のフィニッシュとして知られているが、実際にゼネラルモータースのキャデラックと同じ塗料が使用されていたことは興味深い。

Special Thanks :「Player」/  Yoshinori Hagiwara