Late 1960’s CORAL Electric Sitar 

1960年代中期はイギリスとアメリカでほぼ同時にサイケデリック・ロックが誕生し、若者を中心に新たな音楽シーンと新たなカルチャーが生まれつつあった。
サイケデリック・ロックは、ドラッグ・カルチャーとも呼応しながら、より大きなムーヴメントとなり、これまでにない幻想的でアーティスティックな音楽文化を誕生させたが、そんな時代の中でサイケデリック・ロックを象徴するギター、「CORAL Electric Sitarが」が誕生した。 

 シタールは、800年ほどの歴史を持つ北インドの伝統的な大型民族弦楽器で、演奏はもちろんのことチューニングにも専門的な知識が必須となる。
今回紹介するコーラルのエレクトリック・シタールは、そんな民族楽器の持つ特有のサウンドやニュアンスを、一般的なギタリストがにわかに演奏できるように考案された特殊なエレクトリック・ギターである。
ビートルズやローリング・ストーンズを始め、60年代末から70年代にかけて多くのギタリストやバンドで使用され、様々な楽曲で存在感のあるサウンドを聴かせている。

 コーラルは、1960年代後期に誕生したダンエレクトロ社のブランドで、低価格帯のモデルは一部日本でも生産されていた。
エレクトリック・シタールは、ブランドの創始者であるネイザン・ダニエルとギタリストのヴィンセント・ヴェルの二人によって1976年に考案された。

 「ビョ〜〜〜ン」というシタール特有の幻想的なサウンドを再現するために、独自に開発されたのがシタールマチックと呼ばれるブリッジシステム。
ベークライトで作られたなだらかな形状のブリッジに、弦が微妙に接触することで起きるバズトーンをピックアップで拾っている。
テイルピース部分には6本のピンがセットされていて、そこにボールエンドを引っ掛けて弦をセットする構造になっている。

 セミホロー構造のボディには、ゲイター・フィニッシュと呼ばれる特殊な塗装が施されている。
硬化速度の異なる2色の塗料を重ねて塗装することで自然に作り出されるひび割れ塗装は、このモデルをより個性的なものに仕上げている。

 左側にある13本の共鳴弦は、EからEまでの1オクターブを半音階ずつチューニングするが、実際はほとんど共鳴しておらずあまり効果的とは言えない。
しかし、ここに13本の弦がセットされているということだけで、外観も含めなんとなく説得力がある。

 エレクトリック・シタールはダンエレクトロ社が1969年にその幕を閉じたため2年ほどしか生産されていないが、共鳴弦を持たないシンプルなエレクトリック・シタールも少数発売された。

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