1967 FENDER Stratocaster

フェンダー社の創業者であるレオ・フェンダーは、会社設立以来全ての製品開発を自ら行ってきた。
しかし、健康上の理由から1965年にフェンダー社をCBSに売却し、製品企画開発の第一線から退いた。
そしてCBS傘下として新たに設立されたフェンダー・ミュージカル・インストゥルメンツ・ディヴィジョンにおいて、研究開発部門の特別顧問という形で暫くの間会社に籍を置いたが、1965年はフェンダーにとって大きな転換期となった。

 この年を境に、多くの製品に新たな仕様が採用されていったが、プリCBS期とCBS期とで最も明確な違いとなったのが、ストラトキャスターのラージヘッドの採用である。
ストラトは1954年の登場以来、10年以上に亘りスモールヘッドを採用してきたが、65年末にラージヘッドに仕様変更された。
これはステージやテレビなどで遠くからギターを見た時にも、フェンダー製品であることがよく分かるようにするための仕様だった。

 また、それまで使用されていたヘッドのブランドロゴが、スパゲティ・ロゴからトランジション・ロゴと呼ばれる大型ロゴに変更された。
これもやはりフェンダーの存在感をアピールするための仕様だった。

 1967年の製品カタログでは、さらにモダン・ロゴ(CBSロゴ)と呼ばれるトランジション・ロゴを黒で塗りつぶしたようなより存在感のある大型ロゴに変更され、同時に「STRATOCASTER」のモデル名も太く大きな書体となった。

 モダン・ロゴは1967年末のカタログに掲載された製品から採用されたが、実際にそれらが出荷されたのは翌68年と思われる。

 今回紹介するギターは、ラージヘッドにトランジション・ロゴが採用された1967年製「FENDER Stratocaster」。
オリジナルのスパゲティ・ロゴからモダン・ロゴに切り替わる途中で採用されたトランジション・ロゴは65年から使用されたが、当初はスモールヘッドとトランジション・ロゴの組み合わせだった。
ラージヘッドとトランジション・ロゴの組み合わせが始まったのは65年末である。

 ストラトキャスターが当時何本生産されていたかは公表されていないが、写真の1967年製ストラトキャスターを市場で見かけることは極めて稀で、かなり生産数が少ないことは間違いない。
写真は2ピースのアルダー・ボディにレギュラー・カラーである3トーン・サンバーストがフィニッシュされたスタンダードな仕様だが、大きなキズも見られず極めて良いコンディションを保っている。

 メイプル・ネックにはローズウッドのラウンド・フィンガーボードがセットされているが、この時期のフィンガーボードはかなり薄く、フレットの足がもう少しでメイプルネックに届きそうなほど薄い。
当時はフィンガーボードがブラジリアン・ローズウッドからインディアン・ローズウッドに移行する過渡期にあたり、写真の個体にはインディアンが使用されている。

 デビュー当初からクルーソン社のデラックス・チューナーの台座を加工して使用していたが、1957年にフェンダー・F・キーと呼ばれるオリジナル・チューナーが採用された。
このチューナーはセットする際に加工する必要がないため、取り付け作業がスムーズになった。

 50年代後半からは、ジャズマスターやジャガーといった新たなモデルが相次いで登場し、それらがサーフィン・ミュージックやギター・インストなどで広く使用されるようになると、ストラトの出荷数が徐々に減ってきた。
60年代後半になると、社内でストラトの生産終了が検討されるようになったが、そんな矢先にストラトをアイコンとした若き天才ギタリストが登場した。
60年代後半に彗星のごとく登場したジミ・ヘンドリックスである。70年代に入るとリッチー・ブラックモアがストラトの新たな時代を創造し、80年代以降のエリック・クラプトンがストラトの神となった。

 ストラトキャスターの芯のある力強いサウンドは、70年代以降のハードなロックシーンとの相性が良く、多くのギタリストが愛用することで世代を超えて愛されるギターへと成長していった。

 ストラトキャスターは、1954年に誕生してから現在に至るまで生産中止になったことがなく、2024年で誕生70周年を迎えた。

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