1952 MARTIN 0-15

マーティン・ギターの基本的なラインナップは、“ボディサイズ / 形状” (0、00、000、D、J、GPCなど)と、木材の種類やグレード、装飾類などを総合的に数値化した “スタイル” と呼ばれる数字を繋ぎ合わせることでモデル名が作られている。
今回紹介する「MARTIN 0-15」は、“0サイズ”(オー、もしくはゼロ)の “スタイル15” モデルで、歴史的なマーティン・ラインナップの中で最も廉価でコンパクトなオールマホガニー・モデルである。

 スタイル15の歴史は古く、登場したのは90年ほど前の1934年。
アーチトップのR-15と翌年に登場した0-15がそれぞれ2本づつ製作された。
しかしそれらはイレギュラーな材が使用された特別なモデルで、当時のカタログにも登場していない。
それらがプロトタイプだと考えると、オールマホガニー仕様の0-15が登場したのは第二次世界大戦が始まった翌年の1940年である。

 スタイル18以上のモデルは、ボディが全てスプルーストップを採用しているが、廉価モデルであるスタイル15とスタイル17は、コストの関係でマホガニートップを採用している。

 0-15は、13-1/2インチ・ワイドのマホガニーボディを採用したコンパクト・モデル。
最も廉価ではあるが、マーティンならではの高いクオリティを誇り、人気モデルとして60年代初頭まで生産された。
0や00などの小型モデルは、明快でバランスの良いトーンが特徴で、シングルノートでも音に芯がありレコーディングやフィンガースタイルのギタリストに好まれている傾向がある。

 オールマホガニー・モデルというと、やや鳴りが劣るようなイメージを持つ人もいるかも知れないが、ヴィンテージ・マーティンに関しては力強いトーンで、スプルース・モデルとも異なる立ち上がりの良い魅力的なサウンドである。

 現在では希少なホンジュラス・マホガニーをボディ全体とネックに使用し、ブラジリアンローズウッド・フィンガーボード、上位モデルと同様にXブレイシングを採用。
0、00、000は、ボディサイズに関わらず、全て24.9インチ・スケール、14フレット・ジョイントを採用している(ドレッドノートは25.4インチ・スケール)。

 スタイル15は発売当時スタイル45の約1/8程度の価格帯に設定されていた。
スタイル45はリッチなサウンドはもちろんのこと、華やかな外観も大きな魅力だが、楽器としての基本的なクオリティや精度に関しては45も15も同等で、価格帯に関わらず丁寧にハンドメイドされている。

 写真は1952年に生産されたマーティン0-15。
最も廉価なモデルでありながらも、70年以上に亘り丁寧に使用されてきたようで、かなりコンデションが良く、甘く切ないヴィンテージ・マーティン・サウンドが堪能できる。

Special Thanks :「Player」/ M.T.