[ 1975 FENDER ]
 前回に続いて、今回は1975年に作られた日本製フェンダー・ヴィンテージ・カタログを紹介しよう。
60年代から、フェンダーは山野楽器が日本総代理店として製品の輸入、卸し、販売を行っていた。
70年代は、海外の有名ロック・バンドやアーティストが来日公演を行うようになり、ロックやフォーク、ポップスなど若い世代を中心に広く親しまれ、楽器人口は大幅に増加した。
それに伴い、フェンダー製品は高価ではあったが、プロミュージシャンだけでなく、一部のアマチュア・ミュージシャンも購入するようになってきた。

 70年代頭から、フェンダーUSAの製品カタログが日本で制作されるようになったが、最初はUSAカタログの製品写真を流用し、そこに日本語の製品解説を記したシンプルな内容だった。
しかし、70年代中期になると製品の売れ行きも好調だったこともあり、日本独自のフェンダー総合カタログが制作されるようになる。

 今回紹介するのは、1975年に制作された日本製のフェンダー・カタログ。
体裁はB5判の厚紙を使った24ページのオールカラーで、当時日本で販売されていた製品ラインナップが幅広く紹介されている。
今見ると70年代らしいレトロ感が漂う写真とコピーではあるが、アメリカとは異なる日本独自のオリジナル・カタログを制作しようとした総代理店の心意気が感じられる。
少しでも華やかなカタログを演出したいと思ったのか、表紙も含めどの製品写真にもフェンダー・ガールの中山恵美子という女性が写っている。

 牧場に4本のストラトを垂直に立てている写真などはまだ違和感が少ないが、断崖の岩場にムスタングやジャズマスターなどをズラリと寝かせている写真や、スキー場のゲレンデに6本のベースを立てている写真などは、「こんな所にギターを置いて、大丈夫?」と思わず声が出そうになる。
しかし、湖や山の中に大きな2段積みのアンプやキーボードを持ち込んで撮影した写真からは、苦労したであろう様子が忍ばれる。
山野楽器では、以降同じコンセプトの製品カタログやカレンダーなどを何度か制作しており、当時ギター・ユーザーの間で話題となっていた。
また、製品を紹介するコピーも現代とはやや異なり、「アジャスタブル・トラスロッド」を「調整可能な鉄芯」と日本語で表記しているあたりにも、時代が感じられる。

 1975年製カタログの内容は、ソリッド・ギターが9モデル(6ページ)、ベースが5モデル(2ページ)、アンプ関連が18モデル(6ページ)、エレクトリック・ピアノが2モデル(2ページ)、スティール・ギターが7モデル(2ページ)、バンジョーが3モデル、エレクトリック・ヴァイオリンが1モデル、エレクトリック・マンドリンが1モデル(2ページ)、ピアノ・ベースが1モデル(1ページ)、アクセサリー類が多数(2ページ)というラインナップが紹介されている。
70年代中期のフェンダーでは、アンプ類やスティール・ギター、バンジョーなどにも力を注いでいた様子が窺われる。