今回は、レスポール・モデルの上位モデルとなる「GIBSON Les Paul Custom」を紹介しよう。

 ギブソン社は、1954年にレスポール初のバリエーション・モデルとして、ジャズ・ミュージシャンをターゲットにした高級指向のレスポール・カスタムを発表した。
その後まもなくビギナー向けとなるLP ジュニアもラインアップされ、レスポール・モデルは3種類となった。

 写真の2本は1954年から57年まで生産された初期型のLPカスタムで、どちらも1956年に生産されたモデル。
フロントにPAFを開発したセス・ラバーが考案したピックアップがマウントされている。
57年から61年まで生産された後期型は、ハムバッカーを3基マウントした仕様となった。

 オールブラックのボディにゴールド・パーツの組み合わせが高級モデルに相応しい仕上がりである。
構造面でレギュラーと異なるのは、ボディがメイプル/マホガニーの二重構造ではなく、1ピース・マホガニーを採用している点にある。
これは、対象となるジャズ系ギタリストが好むウォームなサウンドを意識した仕様だが、結果的にコストカットにも貢献した。

 ホンジュラス・マホガニーのワンピース・ボディはダブルバウンド仕様で、ブラックビューティと呼ばれたエボニーブラック・フィニッシュを採用。

 ボディと同じホンジュラス・マホガニーのワンピース・ネックを採用。
本黒檀のフィンガーボードには、大きな白蝶貝のブロックインレイが施され、セールスポイントのひとつでもある非常に背の低いフレットが打たれている。
このフレット仕上げはカタログ等で「フレットレスワンダー」と謳われていた。
再生産後レスポール・カスタムは既にジャズ・ギターではなかったが、この仕様は74年頃まで採用された。

 マルチバウンドのラージ・ヘッドストックには、スプリットダイアモンドと呼ばれる大きなパールインレイが施されている。
2プライのトラスロッドカバーには、ホットスタンプでモデル名が印字されているが、翌57年からは彫刻機で彫り込まれるようになった。
チューナーはクルーソン社のシールファストタイプを採用。

 フロントにマウントされたアルニコ・ピックアップは、P-90と同サイズのシングルコイル・タイプで、ギブソン社として初めてアルニコVが採用された。
これはグレッチが採用したディアルモンド社製のダイナソニック・ピックアップを参考に開発され、高出力が特徴となる。
先端を大きく面取り加工したアルニコマグネットが6本のアジャスタブル・ポールピースとして使用され、スロットスクリューを回すことでポールピースが上下する。

 もうひとつの特徴として、初めてフルアジャスタブルのチューンOマティック・ブリッジが採用されている。
複雑なコードを多用するジャズ・ミュージシャンにとって、正確なイントネーションが得られることは重要で、大きなセールスポイントになっている。
ABR-1のゴールドメッキ・バージョンであるABR-2がセットされている。
サドルの先端を片側に寄せることで、補正の可変範囲が最大になるよう工夫されている。
アルミダイキャストのテイルピースは手仕上げの工程もあり、ひとつひとつ微妙に形状が異なる。
ギターが生産された56年のカタログには、まだバーブリッジのように弦をテイルピースの上からセットした写真が掲載されていた。

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