アコースティック・ギターのボディに使用される木材というと、伝統的なものだと、トップがスプルースもしくはセダー、マホガニーが一般的で、バック&サイドには、ローズウッド、マホガニー、メイプルが使用されている。
その他にもハワイアン・ギターではハワイアンコアが長年使用され、ブランドによってはウォルナットなども使用されている。

 近年は、伝統的な木材に加えて、オバンコール、サペリ、ブビンガ、ジリコテ、ナトー、アフリカン・ブラックウッドなど、様々な木材が使用されるようになり、より幅広いトーン・キャラクターを楽しめる。
しかし、アコースティック楽器の場合、サウンド面以外にも強度や杢目の美しさ等も重視されるため、新たな木材に挑戦するのはそう簡単ではない。

 ここで紹介する「YOKOYAMA GUITARS」は、以前からカマティロやジリコテなど、これまであまりアコースティックには使用されていなかった木材にも積極的にアプローチをしているが、今回も新たな木材を使用したギターとウクレレが展示されていた。

 今回展示されたのは、なんとソメイヨシノのサクラ材をボディのバック&サイドに使用した写真のギター「AR-SAKURA」。

 サクラには色々な種類があり、ソメイヨシノは日本のサクラを代表する最もスタンダードな品種であるが、この木材でギターを作ったという話しは聞いたことが無い。

 ヘッドウェイでもサクラ材を使ったギターが製品化されているが、それはヤマザクラという種類。
ヤマザクラは高さが25mを越える大木も少なくないが、ソメイヨシノはせいぜい15mほどしか成長せず、また虫食いにあったり、サクラてんぐ巣病などにかかったりしやすいため、アコースティック・ギターを作れるような大きな板材を確保することは難しい。 

 今回展示されたサクラ・モデルは1本で、同じソメイヨシノを使用したコンサート・ウクレレも一緒に展示されていた。

 そんな珍しいサクラ・モデルだが、気になるのがそのサウンドだ。
ローズウッドなどと比べるとかなり優しいぬくもりが感じられるトーンと言える。
これは同じサクラ材を使ったウクレレにも言えることで、ソメイヨシノのサウンド・キャラクターと考えて良いだろう。

 ソメイヨシノで作られた世界で一つだけのギター。
桜好きの日本人には、グッとくるかも…。