1956 FENDER Stratocaster

「FENDER Stratocaster」が誕生したのは1954年。
フェンダーがストラトのカスタムカラー・オプションに関して、自社のカタログに初めて記載したのが1956年初頭である。
今回紹介するギターは、その56年初頭に生産されたストラトだが、すでにカスタムカラーのホワイトブロンド・フィニッシュが採用されている。

 ホワイトブロンドのストラトで最も広く知られているのは、1950年代に人気を博した女性ギタリストのマリー・ケイが、当時フェンダーの広告写真で手にしていたギター、通称マリー・ケイだろう。
今回紹介するストラトは、その撮影で使用したマリー・ケイとほぼ同じ時期に生産されたホワイトブロンドの製品である。

 マリー・ケイのデイトは「1956年1月」、写真のストラトのデイトは「1956年2月」であるが、シリアルナンバーを見ると写真のストラトの方が323番若く、デイトとナンバーが前後している。

 しかし、マリー・ケイがゴールドパーツであるのに対して写真はニッケルパーツなので、基本的にはマリー・ケイを意識したオーダー品ではないが、カスタムカラーの宣伝用に製作されマリー・ケイと同じ時期に同じホワイトブロンドで製作されていること自体が極めて興味深い。

 ストラトはデビュー当時アルダー・ボディを採用していたが、コストや生産性の問題から1956年からアッシュ・ボディに変更された。
しかし、ホワイトブロンドの製品に関しては、杢目を活かすためにその後もアルダー・ボディが採用されている。写真のストラトも、ホワイトブロンド・フィニッシュから薄らと透けたアルダーの杢目が確認できる。

 フェンダー・ギターのトレードマークともなっているワンピース・メイプル・ネックは、前年の55年製と比べてややスリムになったが、それでも現在のストラトよりはだいぶファットである。
ヘッドのデカールはファーストバージョンで、ラウンド・タイプのリテイナーが採用されている。

 ピックアップカバーに使用されているハードプラスチック(もしくはホワイトベークライト)と呼ばれているプラスティック素材はやや耐久性に劣り、57年に変更されたが、写真もPUカバーの一部に割れや摩耗が見られる。

 マリー・ケイのホワイトブロンドはとても人気があり、80年代以降はリミテッド・モデルやカスタムショップ製品として何度となく生産されている。
しかし、カスタムカラーに関して正式に規格が定まっていなかった56年初頭に生産されたホワイトブロンドは正しく究極のレアギターである。

Special Thanks :「Player」 / Hyper Guitars