超レアなD-45の12弦モデル、D12-45

 12弦ギター特集の「第5弾」は、マーティンのフラッグシップ・モデルとして人気があるD-45の12弦バージョン、D12-45を紹介しよう。

 アコースティック・ギターの最高峰であるマーティンは、1833年の創業以来190年近い長い歴史を誇っている。
「マーティンの歴史はフラットトップ・ギターの歴史」と言われるほど、マーティンはアコースティック・ギター・シーンに多大な影響を与えてきた。

 数あるマーティンの製品ラインナップの中で、最もマーティンらしい人気モデルというと、やはり1931年に誕生したドレッドノート(「恐れ知らず」の意味、1906年製の英国製大型軍艦の名称)・シリーズだ。

 ドレッドノートのカスタム・モデルであるD-45が最初に製作されたのは1933年で、マーティンの創業100周年にあたる年だった。
当時人気を博していたシンギング・カウボウイ、ジーン・オートリーの特別注文によって誕生したD-45は、当初はレギュラー・モデルではなく、選ばれたプロミュージシャンだけがオーダーできるカスタム・モデルだった。

 しかし、第二次世界大戦が激化し資材が不足する中、1942年に高級モデルが生産中止となり、スタイル45や42等も生産が終了した。
生産開始から生産中止までの9年間に製作されたD-45は、トータルで僅か91本。現在それらのギターはオリジナルD-45として、特別な付加価値が付いている。

 戦後アメリカや世界経済が安定した以降も、D-45の再生産が行われることは無かった。
しかし、60年代の世界的なフォークソング・ブームの中、多くのマーティン・ファンからのラブコールに応えてようやくD-45の再生産が開始されたのは、生産中止から26年後の1968年だった。
マイク・ロングワースが中心となり、2本のプロトタイプの製作に続いて再生産がスタート、新しいD-45は長年待ちわびたファンの元へと届けられた。

 写真は1974年に製作されたD-45の12弦バージョン、D12-45。
再生産の開始から8年後のカスタムオーダーとして製作されたが、この年に生産されたD-45は506本であるのに対して12弦バージョンは僅か2本。

 D-45の最大の特徴となるボディのトップやバックに施されたアバロントリム、そしてヘッドストックの中央にもアバロンのバーティカル・インレイが施され、華やかな外観を演出している。
フィンガーボードには大型ヘキサゴン・インレイが施され、美しさと力強さを併せ持ったマーティンならではのデザインである。

 一般的な14フレット仕様ではなく12フレット・ジョイントが採用され、12本の弦の響きをしっかりと受け止められるように長い超大型ボディが採用されている。
さらに軽量化を考慮したスロッテッドヘッドが採用されることで、よりクラシカルな印象を与える。

 また一見気がつかないが、実はマーティンの12弦モデルは6弦モデルと比べ、12.7mmほどスケールが短い。
やはり12本の弦のテンションを少しでも緩和するための仕様である。
この短いスケールはマーティンだけではなく、多くのメーカーで採用しており、同じスケールを採用しているのはギルドくらいではないだろうか?

 ギルド・ギターの12弦モデルはとてもテンション感があり明るく力強いサウンドであるが、スケールの長さも関係しているようだ。

 12弦ギターの煌びやかなサウンドは、コーラスなどの空間系エフェクターでもなかなか再現できない。
アコースティック・ギタリストであれば、一度は憧れるサウンドだろう。

Special Thanks to Woodman、Player Mag.