1929 NATIONAL Silver Hawaiian Style-4

1920年代は、アメリカを中心に世界的なハワイアン・ブームが巻き起こり、多くのハワイアン・バンドが誕生して演奏活動が活発に行われた。
当時はまだエレクトリック楽器が誕生しておらず、全てアコースティック楽器による演奏だったが、会場が大きくなるに連れてプレイヤー達は楽器の音量に限界を感じていた。
そんな時代に、より大きなサウンドが出せるハワイアン・ギター(スライド奏法専用ギター)として誕生したのが、ワイゼンボーンであり、ここで紹介するナショナルのリゾネイター・ギター、シルバー・ハワイアンだった。

 チェコスロバキア移民のジョン・ドペラとリッケンバッカー社の創始者の一人であるジョン・ビーチャムによって、1925年に設立されたギター・メーカーがナショナル・インストゥルメンツ・カンパニーである。
ナショナルによって開発された世界初のリゾネイター・ギターが誕生したのは創立2年後にあたる1927年。
写真はその最も初期の製品となる1929年製のシルバー・ハワイアン、トライコーン。
オール・メタル・ボディに共鳴器として3つの小型コーンを内蔵したトライコーンは、リゾネイター・ギターのルーツである。
このギターの誕生により、それまで音量に悩まされていたギター・プレイヤー達は存在感のある大きなスライドギター・サウンドを手に入れ、リゾネイター・ギターは多くのプレイヤーに愛用されていった。
発売当初は、写真のようなスクエアネックのラップスティール・ギターとして発売されたが、その後一般的なスパニッシュ・スタイルでも演奏が可能なラウンドネック仕様のモデルも発売された。

 シルバー・ハワイアンは4つのバリエーション・モデルがラインナップされたが、本体の構造は全て同じで装飾の違いによってグレードが分かれていた。
プレーンなスタイル1、シンプルなバラをエングレイブしたスタイル2、スズランのスタイル3、そして最もゴージャスなキクの装飾を全面に施した写真のスタイル4である。
4はボディトップのみならず、ボディバックの全面、ボディサイド、ネックサイドにも見事なハンド・エングレイブが施され、繊細で芸術的な作品に仕上がっている。

 ボディは、ニッケル・メッキされたジャーマンシルバーによるトップ、バック、サイドリムの3ピースで構成され、それらを溶接してボディが作られている。
ジャーマンシルバーは、銀の代用品としてコインや装飾にも使用される高価な素材で、ニッケルと亜鉛の合金である。

 シルバー・ハワイアンのトライコーンは1942年に生産が完了したが、最上位モデルのスタイル4は1940年に生産が完了した。
現在もトライコーンはリイシュウされているが、現在のモデルはジャーマン・シルバー製ではなくブラス・ボディでコーンの形状にも違いがある。

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