1963 MOSRITE The Ventures Model Mark-Ⅰ

1960年代半ばに日本で巻き起こった「エレキブーム」は、当時日本中の若者達に大きな衝撃を与えると共に、瞬く間にエレキギターが全国に普及して行った。
その中心的な存在としてムーブメントを牽引していたアメリカのギター・インスト・グループが、ザ・ベンチャーズだった。
当時はフェンダーやギブソンの製品がほとんど輸入されておらず、ザ・ベンチャーズのメンバーが手にしていたアメリカ製モズライト・ギターは皆の憧れの的だった。
当時モズライトは「エレキのロールスロイス」とも呼ばれ、選ばれた人しか手にすることができない神のような存在だった。

 今回紹介するギターは、そんな時代に生産された1963年製の「MOSRITE The Ventures Model Mark-Ⅰ」。
モズライトは、設立者のセミー・モズレイとザ・ベンチャーズのギタリスト、ノーキー・エドワーズがタッグを組んだブランドで、当時日本では本国アメリカ以上に人気があった。

 写真はブランドが誕生して間もない時期に生産されたザ・ベンチャーズ・モデル・マーク Iで、シリアルナンバーが “0009” という最初期のロットで生産された製品である。
そのためまだ仕様が定まっていないところがあり、いくつか他の年代とは異なるオリジナルの仕様が見られる。

 バスウッドで製作されたダブルカッタウェイ・ボディは、トップがグラマラスなジャーマンカーブに加工され、セットネック、バウンド・ボディといった初年度にのみ見られる仕様が含まれている。

 U字型のトラスロッドが採用された1ピース・メイプル・ネックは24-1/2インチ・スケールで、ナットの手前にOフレットがセットされている。
一般的なネックはローポジションからハイポジションに行くに従って厚みを増すが、モズライトの場合そのテーパーがあまり見られないのも特徴のひとつで、当時のギターとしてはかなり薄いネックグリップである。

 2つのシングルコイル・ピックアップはギブソンのP-90と同じ構造だが、アジャスタブル・ポールピースを採用しマウンティングリングにセットすることで、高さの調整を可能にしている。

 ビブラート・ユニットはビブラミュートの初期型を搭載。これは本来ギルド社に出荷される予定だったパーツのようで、ギルドのロゴを黒く塗りつぶして使用している。

 写真のギターは大きなキズや塗装の剥がれなどがなく、60年前に生産された製品とはとても思えないコンデションが保たれている。

Special Thanks :「Player」/ Hyper Guitars