1973 GIBSON Les Paul Signature Bass

レスポール・モデルの生みの親として知られるレス・ポールは、1940年代からジャズ / ポピュラーミュージックのギタリストとして人気を博していた。
彼は以前から、ロングサステインを求めてエレクトリック・ソリッド・ギターの開発を独自に行なっており、それがギブソン初のソリッド・ギター、レス・ポール・モデルの誕生の大きな切っ掛けとなった。
しかし不思議なことに、彼は生涯を通して自分のシグネチャー・モデルであるレスポール・モデルを愛用することはなかった。

 彼は音質的に有利なローインピーダンス・ピックアップに強い感心を持ち、ステージやレコーディングでは自ら研究、開発したピックアップを搭載したカスタム・ギターを使用していた。
そんなレス・ポールのアイディアを市販モデルとして取り入れたのが、ギブソン初のローインピーダンス・ピックアップを搭載したモデル、レスポール・パーソナルだった。

 1967年、ギブソン社とレス・ポールの再契約が整い、ギブソンはレス・ポールが長年提唱しているローインピーダンス・ピックアップと回路の開発に着手。
そして約2年後の1969年に、ローインピーダンス・ピックアップを搭載した新たなレスポール・シリーズが完成した。
レスポール・パーソナル、レスポール・プロフェッショナル、レスポール・シグネチャー・ベース、そしてフラットトップのレスポール・ジャンボの4モデルである。
今回のコラムでは、それらの中から「Les Paul Signature Bass」を紹介しよう。

 ギブソン・エレクトリック・ベースの歴史は、コラム「ヴィンテージ・ギター・オリジナル・シリーズ その46」で紹介したEBから始まる。
しかし、EBはソリッド・ボディのため重く、またショート・スケールが採用されていたこともあり、フェンダー・プレシジョンのような高い評価には至らなかった。
写真のレスポール・シグネチャー・ベースは、軽量なホロー・ボディにロング・スケールを採用したモデルとして登場した。
写真は発売初年度となる1973年に生産された製品。

 ES-335と同じようなWカッタウェイのシンボディを採用しているが、ハイポジションでの演奏性を考慮して1弦側のカッタウェイ部分がより深くデザインされている。
オリジナルのレスポール・モデルを彷彿とさせるゴールドトップ・ボディの内部には、ネックブロック、ブリッジブロック、エンドブロックの3つに分かれたセンターブロックがセットされている。

 サンダーバード・ベース以来となる34-1/2インチのロング・スケールを採用。
強度を考慮した3ピースのメイプル・ネック / ローズウッド・フィンガーボードは、20フレット仕様となっている。
1973年の同社の製品カタログには「マホガニー・ネック」と記載されているが、メイプル・ネック以外の製品は確認されていない。

 極初期のモデルには楕円形のピックアップが採用されたが、写真のモデルは新たに開発されたビルローレンスのローインピーダンス・ハムバッキング・ピックアップが搭載されている。
通常よりも太いコイルワイヤーを使用し、抵抗値を下げるためにターン数が半分以下に設定されている。

 コントロールは1ボリューム、1トーン、2アウトプットで、ハイインピーダンス・アウトはボディトップ、ローインピーダンス・アウトはボディ・サイドに装着されている。

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