1941 / 1955 MARTIN D-18

マーティン・ギターの定番モデルとして、D-28と並んで人気があるのがD-18である。
D-28がローズウッド・ボディ(バック&サイド)を採用しているのに対して、D-18はマホガニー・ボディを採用し、よりシンプルなデザインを採用している。

 D-28のリッチなサウンドとはやや異なり、よりブライトで温かみにあるサウンドが特徴で、特にプレイヤー指向の強いギタリストに好まれている。
カントリーやブルーグラス、フォークソングなどアメリカン・ルーツ・ミュージックを中心に、ロックやポップス、弾き語りに至まで幅広いプレイヤーに愛用され、これまでに最も数多く販売されたモデルでもある。

 D-18の歴史は古く、14フレット仕様の現行モデルが登場したのは90年程前の1934年。
D-28と共にカタログに掲載されたのが翌35年のことだ。
以来D-18は、数あるマーティン・ラインナップの中でいつの時代においても主軸モデルとして高い人気を誇っている。
今回は、そんなマーディンの代表的な大型モデル、1941年製と1955年製の「D-18」を紹介しよう。

 マーティン・ドレッドノートのボディは、15-5/8インチ・ワイド、4-1/8イント・ディプスのジャンボ・サイズであるが、ワイドに関しては小型モデルとも言われる000より5/8インチ(約16mm)大きい程度で、ギブソンのラウンドショッルダー・ドレッドノートであるJ-45より3/8インチ(約9.5mm)小さい。

 モデル名の由来は、1906年に完成したイギリスの大型軍艦「ドレッドノート」になぞらえて命名されたが、まだ大型のギターがほとんどなかった時代に「軍艦のように大きな」という意味でモデル名に採用された。
余談であるが「超ド級」の「ド」も同じ語源で、ドレッドノートは日本でも一般的な言葉として日常的に使用されている。

 デビュー当初は戦前のスキャロップ・ブレイシングが採用されていたが、1944年に弦の強いテンションを考慮して現行のストレート・ブレイシングに仕様変更された。

 ボンシュラス・マホガニーによるネックは25.4インチ・スケール、20フレット仕様。当初フィンガーボードにはエボニーが採用されていたが、1947年にブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)に変更され、1960年代末にインディアン・ローズウットに変更された。
写真のロングストロット・サドルから、強度的に優れた埋め込み式のショート・サドルに変更されたのが1965年である。

 写真左側は1941年に生産されたプリウォー・モデルで、スキャロップ・ブレイシングが採用されている。
写真右側は1955年製でストレート・ブレイシングを採用し、マーティンとしては極めて珍しいシェイド・フィニッシュ(サンバースト)を採用している。

 左側のモデルのネックには、金属製のスクエアロッドが使用され、右側のモデルにはTバーと呼ばれる断面がT字型の金属製ロッドが採用されている。
80年代までのマーティンには、基本的にネックが反らないという立て前でアジャスト機能が付いていない伝統的なトラスロッドを使用してきた。
しかし、80年代半ば以降は利便性を優先してアジャスタブル・トラスロッドが採用されている。
トラスロッドはトーンとも大きく関連性があるため、現在もスクエア・トラスロッドのサウンドに拘るマーティン・ファンもいて、そういうユーザーに向けたモデルも少数発売されている。

Special Thanks :「Player」/ TC Gakki